論理の力

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論理の力

はじめに

NHKの高校講座に「論理の力」というシリーズがある。私は、日本の国語教育にもっとも欠けていた部分に論理の力があると思っていたのでこのような番組が出来たことは、大変喜ばしいことだと思っています。国語の目的は、正しい日本語を書き、正しい日本語を話せることだと思うのですが、そのためには大前提として正しい考えが出来ることは不可欠です。日本人は、昔から日本人は以心伝心(以心伝心)等と言って、あまり議論しないことを良しとした傾向がありますが、現代の国際化した科学技術が重視される社会では、自分の意見を筋道を立てて説明する能力なしには通用しません。論理というものを楽しんで理解していく習慣を是非(ぜひ)身につけて下さい。
  この部屋は、NHKの高校講座をもとにしたものですけど、小学校の皆さんが見ても十分楽しめる番組です。「不思議の国のアリス」は、もともと幼児向けの童話でしょう。ヨーロッパの人々は、小さい子供のうちから論理を楽しむ習慣があるのですね。[論理の力]は高校講座の中のプログラムの下の方にあります。他にも面白いのいっぱいあります。
NHK高校講座を見る

論理の力目次
あらすじ (1)三段論法 (2)誤った前提・危険な飛躍
(3)逆さまの論理…逆は必ずしも真ならず (4)接続表現…言葉をつなぐ言葉 (5)水掛け論
(6)暗黙の了解 (7)仮説(かせつ)形成 (8)否定のロンリ
(9)類比論法 (10)合意形成 (11)見せかけの根拠
(12)推測の確かさ (13)「だから」に反論する(14)因果関係
(15)ニセモノの説得力(16)事実・推測・意見 (17)問題を整理する
(18)横ならび論法(19)ずれた反論(20)異なる意見を尊重する

裸坊達の部屋

あらすじ

 場面は、高校の映画部。脚本を作って、演技をして撮影(さつえい)するんだね。映画を全部自分たちで作るってえらいよね。作った映画をいろんなとこで上映するんだ。部員は何名かな。杏奈(あんな)が、シナリオを書いている。礼央(れお)とマリーが演技をしている。顧問の先生が溝口先生。映画や演劇には相当詳しいらしい。なお、部長はマリー。他に撮影係がいるようだ。最低4人はいるのだろうね。ストーリーでは、礼央とマリーはアンドロイドでどこかの星から地球に送られてきたという設定らしい。アンドロイドというのは、人間の形をしたロボットということで外見は人間とそっくり。考える力を持っている。しかし、感情は持てるのでしょうか。そこがこの映画のポイントになっています。結果はどうなるのでしょうか。詳しくは、NHKのホームページを見て下さい。上にアドレスがあります。ついでにほかのプログラムも見てみると結構面白いです。  (1)~(10)は、映画部のお話。(11)からは、場面は演劇部に変わります。登場人物は、タネ(男子)、マリア、圭次、ノーノ(女子)の4人の部員が討論しています。そこに、またまた溝口先生が現れます。産休の成瀬先生に代わって演劇部を見るとのこと。さて、どんな話になるのでしょう。

論理の力

(1)三段論法

「私はあなたが嫌(きら)い」→「私は女子」→「だから、女子は全員あなたが嫌いよ。」
これ、三段論法として、正しいですか。あなたが男子生徒だったら、この台詞(せりふ)を聞いて落ち込んでしまいますか。それとも何か反論しますか。

「鳥は卵を産む」→「ペンギンは鳥」→「だから、ペンギンは卵をうむ。」
「鳥は卵を産む」→「カモノハシは卵を産む」→「だから、カモノハシは鳥だ。」
「鳥は卵を産む」→「魚も卵を産む」→「だから鳥は魚だ。」

三段論法とは、2つの前提から1つの推論(すいろん)を導き出すものです。推論とは議論において、あなたが主張したいことです。それと、推論の結果は結論と言ってもいいですね。
ところで、結論が正しくても論理が正しくない(間違っている)こともあります。これでは説得する力はありません。でも、論理が正しくても結論が違っていることもありますよ。前提が違っている場合です。でも、前提が正しい時は、結論は絶対に真です。だから、スゴーク説得力があるのです。だから、あなたも論理を楽しむ習慣を作ってください。
三段論法の形式
「総ての鳥は卵を産む。」…鳥全体について言っています。これを大前提と言います。
「ペンギンは鳥だ」…ペンギンは鳥の一部、つまりペンギンaは鳥Aの一部だ。
「だから、ペンギンは卵を産む」…全体についていえることはその一部についても正しい。
これを数学の記号を使うと下のようになる。∀はすべての意味、英語のA(all;総ての)を逆さまにしたんだ。
∈は、aはAの要素であることを示す。→推論の向きを示します。
∴は「結論として」の意味です。
「∀A→B」「a∈A」「∴a→B」
つまり、「総てのAはBである」「あるaはAに含まれる。」「だから、aはBといえる。」
鳥の集合をAとしよう。つまり、すべての鳥の集合をA、卵を産む動物の集合をBとすると、A→Bですね。A⊂Bとも書きます。
AはBに含まれています。ペンギンaは、Aの要素です。だから、a∈Aと書きます。a⊂Aと書いても同じです。aがAの要素なら当然a→Bですね。つまり、a∈B
もう一度、復習します。この記号けっこう便利ですよ。
「∀鳥→卵を産む」「ペンギン∈鳥」「ペンギン→卵を産む」
「総ての鳥は飛べる」「ペンギンは飛べない」「だからペンギンは鳥ではない。」
これは、推論としての道筋は正しいですね。総ての鳥が飛べるというのが真実ならば、ペンギンは鳥ではないことになりますね。でも、ダチョウは、キウイだって飛べません。つまり、総ての鳥が飛べるという前提が間違い。
三段論法は、「∀A→B」「a∈A」「∴a→B」のパターン以外にもいくつがありますが、集合におけるベン図を考えると正しい論理かどうか分かります。集合と論理は相性がいいのです。
練習問題を出します。次の推論は正しいですか。間違っている場合は、どこがおかしいか指摘して下さい。
問1
「総ての会員は会員証をもっている」「山田さんは会員証を持っていない」「だから山田さんは会員ではない。」
問2
「総ての素数は奇数である」「2は偶数だ」「だから2は素数ではない」
問3
「女子は全員あなたが嫌いよ」「私は女子」「だから、私はあなたが嫌(きら)い」
問4
「私はあなたが嫌(きら)い」「私は女子」「だから、女子は全員あなたが嫌いよ。」問3と似ているけどどこが違う??
問5
「昨日、あなたに電話したのは河口さんか山本さんのどちらかだ」「河口さんではないです。」「じゃあ、山本さんだね」
これ、消去法の三段論法というもの。
問6
「たいていの子供はそんなことはしない」「あなたは子供だ」「だから、あなたはそんなことをしてはいけない。」
大前提は、∀マークがつかないと、論理的に正しくないですね。
以上

論理の力

(2)誤った前提・危険な飛躍

三段論法による推理が正しいためには、
       ①推論に飛躍(ひやく)が無いこと
       ②前提に誤りがないこと

「小学生は勉強がきらい」「私は小学生」「だから、私は勉強がきらい。」
この推論、どこがおかしいかな。あなたが小学生でお母さんをこれで説得できるかな。
まず、大前提の「小学生は勉強がきらい」は、正しいかな。もし、あなたが勉強が好きだったら、あなたは小学生でなくなるのかな。
クラスの全員がきらい。でも、世界を見渡してごらん、勉強したくても貧しくて出来ない子供たちが何千万人もいるんだよ。
だから、クラスの全員がきらい→小学生は勉強がきらい
は、明らかに飛躍だ。しかも、前提として誤り。三段論法の大前提には∀マークがつかないとだめだ。∀マークは、総ての○○で、かつ絶対に例外なくだ。
『感情を持つものはアンドロイドではない』『マリーは感情を持つ』『よって、マリーはアンドロイドではない。』
アンドロイドとは、人間そっくりな格好をしたロボットだ。技術がどんどん進むと外見では、人間と見分けがつかなくなってくる。今の所、感情や意志といったものは持てないと考えられているから、上の推論は正しいと言える。マリーさん良かったね。でも、将来は感情を持つアンドロイドが出来ちゃうんじゃないかと心配している人も沢山いるんだよ。

『ブランド品をたくさん持っている人はオシャレである。』→『私はブランド品をたくさん持っている。』→『よって私はオシャレである。』

ブランド品をたくさん持っていることと、おしゃれであることに因果(いんが)関係はない。因果関係って分かるかな。A⇒Bのような関係だ。オシャレの人の中にはブランド品をたくさん持っている人も多いかも知れないが、手作りのものを好む人だっている。前提がまちがっているし、その結果も飛躍がある。

『あの塾(じゅく)は合格率が高い』→『僕はあの塾に入る』→『だから、僕は必ず合格する』
合格率が高いが高いことと、全員が合格することは全く違う。これも論理の飛躍だ。多くの人が合格するということの中に勝手に自分も含めている。

アリスのお部屋(番組の最後に出て来る)
アリス 「間違った三段論法ってさ、結論が間違っちゃってるんだよね。」
ウサギ 「違うね。結論が正しくてもめちゃくちゃな三段論法はある。」
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『アリスは猫だ』→『猫は空を飛べない』→『だからアリスは空を飛べない』
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アリス  「不思議!『アリスは猫だ』って、一つ目の前提でめちゃくちゃなことを言ってるのに、『だからアリスは飛べないって』正しい結論になっている!」
ウサギ  「結論だけじゃなくて、どういう前提から、どうやってその結論が出てきたのか、その道筋をちゃんと見なくちゃね」

アリス 『ウサギは亀だ。』→『亀は卵を産めない。』→『だからウサギは卵を産めない』
ウサギ 「スゴイ!それ前提が二つとも間違ってるのに結論は正しい!みごとにでたらめな三段論法だ!」

論理の力

(3)逆さまの論理…逆は必ずしも真ならず

映像部員たちが映画の撮影をしています。テレス役の礼央(レオ)と、アリス役のマリーが茫然とした表情で並んで立っています。映画のなかで、ふたりは地球にやってきたアンドロイドという設定です。
テレス(礼央) 「やはりここにも生命反応は無い。」
アリス(マリー) 「分かっていた事だが やはり無い。」
テレス 「やはり核戦争が起こってしまったようだ。だから人類は滅亡した。」
アリス 「核戦争が起こったから人類は滅亡した・・・ 本当にそうなの・・・ テレス。」
テレス 「そうだともアリス。逆に言うならば 人類が滅亡したということは、つまり、核戦争が起こったということなのだ・・・ あれ、なんか変だぞ。」
杏奈 「アンドロイドとは人間型の人工生命体だ。逆に言えば 人間型の人工生命体はアンドロイドだ。ほら、完璧なロンリでしょ。」

『逆に言えば』って、日常でも良く使われる台詞ですね。逆は必ずしも真ならずって言いますね。これも論理学の世界では常識なんですよ。
Aならば、Bである。A→B、またはA⊂Bの時、B→A(B⊂A)は普通は言えません。どういう時に言えるかって、A=Bならば、B=Aです。このようなAとBは、同値であると言います。普通は、A⊂Bの時、B⊂Aになるはずもない。クジラは動物だ。動物はクジラだ。そんな馬鹿なですね。
『アンドロイドとは人間型の人工生命体だ。逆に言えば 人間型の人工生命体はアンドロイドだ。』…人間型の人工生命体とはアンドロイドの定義そのままです。
この場合、アンドロイド=人間型の人工生命体ですね。
『図書館には本がたくさん有る。逆に言うと、本がたくさん有るのが図書館だ。』
このばあい、図書館⊂本がたくさん有る場所で、本がたくさん有る場所⊂図書館にはなりません。
『素晴らしい映画には 素晴らしいシナリオを書く人がいる。逆に言うと、素晴らしいシナリオを書く人がいると素晴らしい映画になる。』
これも、正しくないですね。いい映画を造るためには、良い監督、良い俳優、良いカメラマン、どれも必要ですね。
でも、素晴らしいシナリオを書く人がいることは必要ですね。このような条件を必要条件と言います。
『お小遣い1万円もらえれば消しゴムが買える』。お小遣い1万円もらえれば他にもいろいろなものが買えますね。このような条件を十分条件と言います。
アリスのお部屋(またまたアリスの部屋です)
【不思議なお茶会】
アリス 「今日やった逆さまのロンリ、実は私たちも本の中でやってるんだよね~。」
ウサギ 「そうそう、今日は特別に有名なあのシーンをやってみちゃうぜ~!」
アリス 「う~ん。私は思ったことを言いたいんじゃなくて、言った事を思ったの。それって同じ事でしょ!」
全員 「えっ?」
「見たものを食べる」と「食べるものを見る」が同じ?
「もらえるものは好きだ」と「好きなものがもらえる」が同じ?
「寝る時に息をする」と「息をする時に寝る」が同じ?
帽子屋 「それじゃあ『見たものを食べる』ってのと『食べるものを見る』ってのが同じことだと言ってるみたいなもんだ。」
三月ウサギ 「『もらえるものは好きだ』ってのと『好きなものがもらえる』ってのが同じだ、みたいな!」
ヤマネ 「それって、『寝る時に息をする』と『息をする時に寝る』が同じだ、みたいな・・・。」

論理の力

(4)接続表現…言葉をつなぐ言葉

論理的に説明するためには適切なつなぎ言葉が必要ですね。
ここでも、アリスとテレスの会話。二人はアンドロイドという設定でした。
『感情を持つのは人間らしい事だ。そして感情を持つ動物もいる。』
ここで、そしてという表現が何か変だとなったわけですね。確かに変ですね。
人間でなくても感情を持つ。だから、自分たちが感情を持ってもおかしくないと言いたいのでしょう。だからここは逆説の接続詞を使うべき。
「しかし」いいね。「ただし」も逆説に使える。でも、意味が少し違うようだ。「そして」は順接の接続詞だ。

①『このレストランは美味しい。しかし高い。』
②『このレストランは美味しい。ただし高い。』
二人でこんな会話していたら、この二人はこのレストランに入っただろうか。
①②は、二つの文章からなっているけど、前と後のどちらがより強調されているのでしょうか。①は、高い。だからやめておこう。という感じ。後半がより強調されていることが分かりますか。②では、美味しいけど高いので覚悟(かくご)してね。という感じ。前半がより強調されていますね。多分話し手は入って見たいのでしょう。

アリスの不思議な国(その3)
「なぜなら」と「だから」
アリス 「ねぇねぇ、接続表現面白かったね。私たちもやってみよ!」
チェシャ猫 「それじゃあ、『卵は落としちゃいけない』 と 『卵は割れやすい』 の2つはどうつなぐのがいいと思う?」
アリス 「 私は“ただし”がいいな。」
卵は落としちゃいけない。ただし卵は割れやすい。
チェシャ猫 「 不正解!逆のことを言っているわけじゃないから、“ただし”は変。すごく変だ。」
うさぎ 「“なぜなら”かな。」
卵は落としちゃいけない。なぜなら卵は割れやすいから。
チェシャ猫 「正解!『卵は割れやすい』は、卵を落としてはいけない理由を述べているから、“なぜなら”がいいのさ。」
チェシャ猫 「ところで、“なぜなら”に一見似てる“だから”は結論を先に言うためのもの。ひひひ、逆にな~れ~。」
「卵は割れやすい。だから卵は落としちゃいけない。」 チェシャ猫 「理由を先に言って、結論をその後に言ってるから、“だから”になる。“なぜなら”とは逆だ。」
アリスとうさぎ 「面白い!」

論理の力

(5)水掛け論

アンドロイド達をを主人公にした映画を造る話の続き
テレス 「アリス、そもそもアンドロイドに感情は必要なのか?」
アリス 「テレス、感情は必要だ。」
テレス 「感情は必要だと思わない。」
アリス 「必要だ。」
テレス 「必要だと思わない。」
アリス 「必要だ!」
テレス 「必要ではない!!・・・って、このやりとりくどくない?」

水掛け論はとは、お互いの主張を繰返すだけ、お互いバケツで水を掛け合っていて、びしょ濡(ぬ)れになっているのに、何も決まらないたとえ。水掛け論を解消するには、お互いその主張の理由を言い合って、それに対して自分の反論を言い合えばよい。反論できない、つまり相手の言うことがもっともな点は素直に認め、その代り、自分の主張も相手に理解してもらう。たいていの場合、ウマイ解決が見つかるものだ。

礼央 「あ、そうだ。議論と言えば、映画のタイトルを決めるの忘れてた!」
マリー 「はいは~い、それじゃあ部室に戻りましょ~。」
バラバラに見えた意見も、それぞれアンドロイドと感情の対比を考えている
議論の始まり
マリー 「それではここからが本題。まず、なぜそれがいいのか理由を言わなくちゃ。」
礼央 「じゃあ僕から。アンドロイドが主人公なので、まず『アンドロイド』。
それから。アンドロイドが感情を手に入れようとする物語だから、感情の象徴として『涙』。それで、『アンドロイドの涙』。」
マリー 「はいはい!次は私。えっと、私も感情は入れたいけど、柔らかい言い方にして『こころ』。それと2人の名前が不思議の国のアリスと哲学者のアリストテレスから来ているので、2人の名前を入れました。」
杏奈 「わたしもキーワードは『感情』だと思う。そして、あえて冷たいイメージのする『機械』という言葉を選んで、並べてみたの。」
マリー 「そうか。意見がバラバラだと思ったけど、みんなアンドロイドと感情の対比を考えてるんだ。」
礼央 「そうしたら、『アンドロイド』とそのまま言うのがいいのか、より冷たい感じの『機械』にするのがいいのか、それとも登場人物の名前を使って『アリスとテレス』にするのがいいのか。」
杏奈 「あとは『感情』と言うか、柔らかくして『こころ』にするか、それとも象徴的に『涙』と表現するか。」
溝口先生 「議論の始まりね。」
マリー 「そう、水かけ論って意地を張り合うとすぐに始まっちゃう。」
杏奈 「理由を挙げて意見を言うこと。そして、相手の挙げた理由をきちんと検討すること。それが、水かけ論にならないための方法なんだ。もしかしてこれも・・・。」
溝口先生 「そう、これもロンリのちから。」…これいつものセリフ

さあ、さあまたアリスの国の話
女王様の循環論法;理由と結論が同じ→循環論法という
.アリス 「うさぎさん、うさぎさん。水かけ論といえば女王よね。」
うさぎ 「そうだね。あの人とはまったく議論にならないよ。何かといえばすぐに『こやつの首をはねろ』だもんね。」
女王 「何か言ったかい?」
アリス 「あ~、女王様!」
女王 「お前たち、私の悪口を言ってたね?」
アリス 「言ってません。」
女王 「いいや、言ってた。こやつらの首をはねろ!」
うさぎ 「言ってないのに、どうして首をはねるんですか!」
女王 「お前たちの首が、まだつながっておるからじゃ。」
アリス 「首がまだつながっていると、どうしてはねなくちゃいけないの?」
女王 「お前たちの首は、はねられるべきだからじゃ。」
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お前たちの首は はねられるべきだ
だから はねなければならない
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うさぎ 「女王様、理由と結論が同じになってますけど。」
チェシャ猫 「理由と結論が同じ。そういうのは循環論法っていうんだぞ。」
アリス 「循環論法だ。循環だ!堂々巡りだ!循環だ!女王様の論理は循環論法だ!」
女王 「その首のない猫の首もはねてしまえ!」
アリス 「無い首まではねたいなんて、女王って本当にわがままね。」

論理の力

(6)暗黙の了解

テレス 「最近ずっと雨続きで、野菜が高い。だから、僕はうれしい。」
アリス 「そう最近ずっと雨続きで、野菜が高い。だから、私もうれしい。」
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溝口先生 「2人がどうして野菜が高くて喜んでいるのか、理由が分かったかしら?」
杏奈 「ん~、分からなかった。今のも『暗黙の了解』が隠れているの?」
溝口先生 「そうよ。どういう『暗黙の了解』が隠れているか、考えてみなさい。」
マリー 「あ、分かるような気がする。野菜が高いとママがあんまり買ってこないの。それでね、わたし野菜嫌いだから、ちょっと…、うん~ 超嬉しい!」
杏奈 「たしかにそう説明されれば分かる。」

この場合は、会話している2人は、暗黙の了解をお互い分かっているのかもしれない。でも、これが劇なら見ている人はさっぱりわからないね。

礼央 「失敗は成功のもとって言うからさ…って、あれ?『失敗は成功のもと』って、なんだか説明が飛躍してない?」
マリー 「失敗したのに成功するって、意味が分からない」
溝口先生 「『失敗は成功のもと』とは、失敗した原因を突き止める事によって成功する手がかりを見つける事ができる、という意味のことわざね。」
杏奈 「普段 違和感を持たないのは、頭の中で欠けている説明を補っているのかも。」 マリー 「つまり、『暗黙の了解』ね。」
溝口先生 「マリー、分かってきたようね。」

礼央 「あ、そういえば昨日、家でこんな会話があった。」
溝口先生 「どんなのかしら。」
「イケメンだと無理」な理由
礼央 「妹がね、好きな男子ができたらしいんだ。どうしようかって悩んでたから、思い切ってぶつかっていきなよって言ったらさ、 『無理だよ、だってイケメンなんだもん』って。」
マリー 「なんで?イケメンいいじゃん!」
礼央 「でしょ?飛躍してるでしょ?だから、イケメンだとどうして無理なのって聞いたら、『イケメンだとモテる。モテるから絶対もう彼女がいる。だからだめだ』って。それって違うよね。イケメンだからってモテるとは限らない。兄を見ろよって言ってあげたんだ。」
杏奈 「ん?それってどういう意味?」
礼央 「まぁあ…、ね…、その… 一応イケメンかなって… でもモテないなってね…」
杏奈 「ふ~ん。まぁ礼央はほっといて、モテるからって彼女がいるとは限らないし、私は中身重視だから顔だけでは選ばないな~。」
礼央 「そうなの?」
杏奈 「そうよ、悪い?」
礼央 「いや、悪くないけど…。」
溝口先生 「そう。飛躍した説明には『暗黙の了解』が前提として隠されている。でも、その前提が間違っていることがあるの。だからこそ、飛躍した説明は危険なのよ。」
杏奈 「危険な、飛躍ね。」

マリー 「そう言えば、去年のスキー教室で野矢くんっていうクラスの男子にお手本を見せてもらおうって話になって、野矢くんが『どうしてオレなんだ?』って驚いたの。みんなは『お前北海道出身じゃないか!』って言ったんだけど。」
礼央 「それ、北海道出身だからスキーがうまいっていう『暗黙の了解』があったわけだ。」
マリー 「そう。だけど、『北海道出身でもスキーがうまくない人は普通にいる』って言われちゃって。」
礼央 「つまり、『暗黙の了解』が間違ってたわけだ。まあ、ありがちな決めつけだけどね。」
マリー 「私も経験したことある。私 帰国子女だからさ、英語で道きかれたりしたときに、みんな私に押しつけるんだよね。」
礼央 「帰国子女は英語がうまい、っていう『暗黙の了解』だね。」
マリー 「だって私、いたのフランスだよ。メルシーだよ。サンキューじゃないもん!」
杏奈 「当たり前だと思っていた『暗黙の了解』が、実は間違っていたってことがある。」
溝口先生 「ときには闇に隠された前提に光を当てて明るみに出す。そう、それもロンリのちから。」

人は、意見を言う前にまず始めに自分を説得します。自分への説明ならどうしても暗黙の了解事項は飛ばしてしまいます。思考の節約ですね。その分速く考えることが出来ますね。でも、あらためて人に説明をしようとすると、論理の飛躍が沢山あることに気が付くはずです。自分でも説明できない飛躍は、当然他の人にも通じません。いつも注意して、飛躍の無い説得が出来るようになりましょう。
またまた、アリスの国のお話
風が吹けば桶屋が儲かる…『暗黙の了解』が隠れていることわざ
アリス 「ねぇねぇ、うさぎさん、うさぎさん。」
うさぎ 「なんだいアリスちゃん。」
アリス 「暗黙の了解ってさ、ことわざにもあるよね。」
うさぎ 「劇中に出てきた『失敗は成功のもと』もそうだね。」
アリス 「『かわいい子には旅をさせろ』ってのもあるでしょ? これも何か暗黙の了解が隠れてるよね?かわいいなら家で大切に育てればいいのに!」
うさぎ 「まぁまぁ、落ち着いて。旅をしていろんな経験をした方が、子どものためになるっていう暗黙の了解が前提にあるんだね。」
アリス 「それって私じゃん!こんな不思議な世界を経験してるんだもん!」
チェシャ猫 「風が吹けば桶屋が儲かる~!」
アリス・うさぎ 「でた~!チェシャ猫!」
アリス 「なんで風が吹くと桶屋が儲かるの?」
チェシャ猫 「昔のことわざさ。いいかい。」
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風が吹くと土ぼこりが目に入って目が見えなくなる→三味線を弾いて生計を立てる盲人が増える→三味線には猫の皮が使われているので猫が減る→猫が減るとねずみが増えて桶をかじる→桶を買い替えなくてはいけない
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チェシャ猫 「というわけで、風が吹くと、桶屋が儲かる~!」
アリス・うさぎ 「もうわけわかんない!」

論理の力

(7)仮説(かせつ)形成

 推理小説で犯人を捜すとき、まず始めに仮説をつくります。例えば、考えられる犯人がA、B、Cの3人だったとしましょう。こういう時3人について順番に犯人だったと仮に設定して見ます。あなたが名探偵になってください。教室で何かが盗まれた。例えば、まず始めにAさんを疑って見ましょう。ごめんなさい疑って。まだまだ、Aさんに言う段階ではないよ。あなたの頭の中での話。犯行が行われた時刻には、鍵がかかっていた。Aさんは、鍵を持っていない。では、Bさんは。持ってない。仮説形成では、同時に常に仮説の検証という作業が行われていて、検証の結果生き残った仮説だけが真実の候補となります。Cさんは持っていた。では、Cさんが犯人か。Cさんは持っていた鍵をAさんに渡したと言ってます。では、本当に鍵がないと教室に入れないか。守衛さんが教室に鍵をかける時にこっそり教室に入り込んで、次に鍵を開ける時にこっそり出て行ったなんていうややこしいトリックもあるかもね。  でも、最初に仮説を立てないと、検証という作業も出来ないし、ああでもない、こうでもないと考えることが推理小説の面白さですよね。最初の仮説は論理というよりアイデアの力が必要で、普段から色々な知識を蓄えておくことが必要でしょう。

溝口先生が説明したのは、「仮説形成」の実例としてよく取り上げられるエピソードです。
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19世紀のウイーンの病院。ここには第一病棟と第二病棟があって、それぞれでお産が行なわれていた。ところが、第一病棟の方が第二病棟よりも産後の母親の死亡率が高かった。それはなぜか?
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マリー 「謎が現れた。」
溝口先生 「謎に対する仮説は通常複数考えられる。だから、想像力をふくらませてさまざまな仮説を考えてゆくの。」
医療設備や環境の違い?
評判が妊婦に不安を与えた?
第1病棟の医者は新米だった?
杏奈 「例えば医療設備とか、環境の違いが原因かしら。」
礼央 「第一病棟の方が死亡率が高いっていう評判が立って、それがお産をする人に不安を与えた、とか。」
マリー 「第二病棟の医者はベテランなので、第一病棟の医者の方が新米だったのかも。」
溝口先生 「いいわね。仮説を考えたら、それを検証していきましょう。」
ポイント2 仮説の正しさを検証する。
妊婦の不安説には無理がある。
第1病棟は医者が、第2病棟は助産婦がお産を担当。
杏奈 「私が立てた『環境の違い』という仮説はどうかしら。」
溝口先生 「当時もそれが疑われたわ。だけど調査した結果、大きな違いは見出されなかった。」
杏奈のたてた仮説では、事実をうまく説明できないようです。
礼央 「じゃあ、不安を与えた、という仮説は……。」
杏奈 「それが大きな死亡率の違いに繋がるのかなあ。」
溝口先生 「そうね。少し無理があるわね。」
確かに、不安が死亡率の違いにつながるという説明も妥当ではありません。
マリー 「医者の経験の違い、というのはどう?」
溝口先生 「でもね、死亡率が高い第一病棟では医者が出産を担当し、死亡率が低い第二病棟では、医者に比べると医学の専門知識を持たない助産婦が担当していたの。」
礼央 「え? 医者が担当していた方が死亡率が高かったの?」
溝口先生 「そう。」
3つ目の仮説もダメ。しかし「死亡率が高い第1病棟では医者が、第2病棟では助産婦がお産を担当していた」という新しい事実が浮かび上がりました。
マリー 「そこに新たな謎がありそう。」
仮説が検証された
杏奈 「医者と助産婦の違い……。医者はお産以外にもいろいろな病気を診る。何か関係ないかな。」
溝口先生 「いいところに気がついたわね。第一病棟の医者は解剖などもしていたのよ。しかも、当時は病原体という考え方も感染という考え方もなかったから、消毒もきちんとしなかったの。」
礼央 「院内感染だ。」
溝口先生 「そこで、消毒を義務付けたら死亡率が減少した。」
杏奈 「仮説が検証された。」
そうです。院内感染が原因だったのです。
溝口先生 「これは当時その病院の医者だったゼンメルワイスという人が実際に行なった仮説形成よ。あなたたちのシナリオ書き込み事件も、こんなふうに考えていくの。」

鏡の国の仮説形成
鏡の国に入るアリスとうさぎ
いろいろなことが あべこべになっているはず
アリス 「ねえねえ、うさぎさん。仮説が正しいかどうかは、どうやって確かめるの?」
うさぎ 「その仮説が正しいとどうなるかを予想して、その予想のとおりになるかどうかを調べるのさ。やってみるかい?」
二人は鏡の中に飛び込み、「鏡の国」にやってきます。
アリス 「ここはどこ?」
うさぎ 「鏡の国かな。」
アリス 「本当に?」
うさぎ 「ここが鏡の国だっていうのは、まだ仮説さ。だから仮説を確かめるのさ。」
アリス 「予想するのね。もしここが鏡の国なら、きっといろんなことが あべこべになってるはず。」
うさぎ 「ご飯を食べるとお腹が空くし、ねずみが猫を追いかける。」
この井戸に飛び込むと?
飛び上がってしまう二人
アリス 「じゃあ、この井戸に飛び込んだら!?」
うさぎ 「おっこちないで、上に飛び上がっていくはず!」
アリス・うさぎ 「せーの!あ~れ~!」
空高く飛び上がり、どこかへ行ってしまった二人。
ヤマネに追いかけられるチェシャ猫
チェシャ猫 「他のことも あべこべかどうか調べなくちゃいけないのに、いなくなってしまった。」
ヤマネ 「ひひひひひ!」
チェシャ猫 「うわっ!ヤマネだ!逃げろー!」

論理の力

(8)否定のロンリ

否定のベン図

否定とは、今言ったことを取り消す事。AならばBである。A⇒B、つまりA⊂B、AはBであることの集合に含まれてます。
Aでなければどうですか。BになるかBにならないかどうか良く分かりませんね。答えは、「Aでなければ、Bであるとは限らない。」です。もっとぶっちゃけたいいかたなら、「AならばBである。」の否定は、「Aでなければ、Bでないこともある。良く分からん。」です。

溝口先生 「では否定をクイズ形式でやってみましょう。例えばこんな文、否定をするとどうなる?」
-----------------------------<問題1>-------------------------------
風が吹けば桶屋がもうかる
------------------------------------------------------------------------
溝口先生 「これを否定できるかしら?」
マリー 「あ、これ知ってる!それじゃ、私がやりまーす。『風が吹けば桶屋がもうかる』を否定すると『風が吹けば桶屋はもうからない』。」
溝口先生 「不正解。」
マリー 「えっ、何で?」 溝口先生 「『風が吹けば桶屋がもうかる』は『風が吹くと “いつも” 桶屋がもうかる』と言っているのよね。だったら、その否定は『風が吹くと “いつも” 桶屋はもうからない』じゃなくて、そうじゃない場合もあるということ。」
マリー 「ということは、『風が吹いても桶屋がもうからない場合がある』ってことかな?」
------------------------------<正解>--------------------------------
風が吹けば(いつも)桶屋がもうかる
↓ 否定
風が吹いても桶屋がもうからない 場合がある
------------------------------------------------------------------------
溝口先生 「そう、それでいいの。」 『風が吹けば桶屋がもうかる』には、“いつも(必ず)” が隠れています。このとき、否定される対象は『もうかる』ではなく『いつも』です。そのため、否定した形は、『いつも もうかるわけではない』、つまり『もうからない場合もある』となります。

溝口先生 「では次の問題はこれよ。」
-----------------------------<問題2>------------------------------------
私はあなたのことが好きだ
-----------------------------------------------------------------------------
波 「私やります。否定すると、『私はあなたのことが嫌い』ではなく……」
マリー 「え?『好き』の否定は、『嫌い』じゃないの?」
波 「それは違うんじゃない?それだと、好きか嫌いかの どちらかしかないことになってしまう。」
溝口先生 「そうね。『好き』の否定は『好き』以外の全ての気持ちを含んでいるの。あることの否定は、そのこと以外の全てを表している。『嫌い』というのは、『好き』以外の感情の一部でしかないわ。」
波 「『ぼくのこと好き?』って聞かれて、それを一番正確に否定するなら、『私はあなたに対して “好き” という感情はもっていない』って答えるのがいいと思う。」
------------------------------<正解>--------------------------------
私はあなたのことが好きだ
↓ 否定
私はあなたに対して『好き』という感情はもっていない。または、好きではない。もOKだ。
------------------------------------------------------------------------
溝口先生 「それが正しい否定ね。良い場合は『好きでも嫌いでもない』、悪い場合は『嫌い』かもしれない。とにかく『嫌い』だけはないということ。では次はこれよ。」
-----------------------------<問題3>------------------------------------
インターネットの情報は全て正しい
------------------------------------------------------------------------------
礼央 「否定すると、『インターネットの情報は全て間違い』。」
溝口先生 「不正解。」
礼央 「やってしまった……」
溝口先生 「『全員正解』の否定は、『全員不正解』かしら?」
礼央 「『全員正解』じゃないということは、『不正解の人もいる』ということだ。」
溝口先生 「そう。だから、『インターネットの情報は全て正しい』の否定は?」
礼央 「『インターネットの情報には 間違いもある』だ。」
------------------------------<正解>--------------------------------
インターネットの情報は全て正しい
↓ 否定
インターネットの情報には 間違いもある
------------------------------------------------------------------------
溝口先生 「そう、その通り。では最後はこれよ。」
-----------------------------<問題4>------------------------------------
明日 兄と妹が二人とも旅立つ
------------------------------------------------------------------------------
杏奈 「否定すると、『明日 兄と妹の少なくともどちらか一方は旅立たない』。」
溝口先生 「正解。」
杏奈 「これ、私がシナリオに書いたのと同じ形だから。」
------------------------------<正解>--------------------------------
明日 兄と妹が二人とも旅立つ
↓ 否定
明日 兄と妹の少なくともどちらか一方は旅立たない
------------------------------------------------------------------------
溝口先生 「さっきも言ったように、あることの否定は、そのこと以外の全てを表わしている。だから、『兄と妹が二人とも旅立つ』の否定は、兄と妹が二人とも旅立つ以外の全ての可能性を含んだものになるの。兄と妹が二人とも旅立つ以外の可能性にはどんなものがあるかしら。」
マリー 「兄と妹が二人とも旅立たない。でも、それだけじゃないね。」
礼央 「一方が旅立って、一方が旅立たないという場合もある。」
波 「それで、『少なくともどちらかは旅立たない』という答えになる。」
溝口先生 「では、杏奈が書いたシナリオをもう一度やってみましょう。」
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アリス 「『二人とも星に帰らなくてはいけない』と言えば否定し、『二人とも星に帰ってはいけない』と言えば否定する。あなたは矛盾している。」
ジガ 「矛盾してはいない。あなたたちの発言はどちらも間違っている。あなたたちが二人とも ここにいることは否定される。」
テレス 「私たちは破棄されるのか?」
ジガ 「破棄されるのがイヤならば、どちらかはこの星に残り、どちらかは星に帰るのだ。」
アリスとテレス 「いやだ!私たちはあなたを否定する。」
----------------------------------------------------------------------------
杏奈 「カット!」
マリー 「なんだか物語が一気に進んだね!」
礼央 「杏奈の言いたいことがよく分かった。あることを否定するというのは、そのこと以外の全ての可能性を含んでいるんだね。」
杏奈 「分かってもらえて嬉しい。」
溝口先生 「否定を正しく捉える。それもロンリのちから」

アリスの不思議の国
アリス 「ねぇねぇ、うさぎさん。否定ってさ、難しいね。」
うさぎ 「否定にはいろんなことが含まれるからね。例えば、こんなのはどうだい?」
----------------------------------------------------------------------------
セイウチ 「このカキ君たちを食べるべきか、食べるべきではないのか、それが問題だ~」
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アリス 「あ、これよくやるやる!ハムレットみたいなやつ。」
ウサギ 「そうそう。」
カキを食べるべきか、食べるべきではないのか
「どちらでもよい」という選択肢もある
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大工 「食べなくちゃいけないってことは ないと思うよ。」
セイウチ 「では、食べてはいけないのか~?」
大工 「いやー、食べちゃいけないってこともないんじゃない。」
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アリス 「矛盾してる~。」
うさぎ 「そこだよ、否定が難しいのは。矛盾はしていないのさ。考えてごらん。『食べなくちゃいけない』の否定は『食べてはいけない』なのか。本当にその二つしかないのかい?」 アリス 「あ、そうか。『どちらかにしなくちゃいけない』っていうんじゃなくて、『食べても食べなくてもどっちでもいい』っていうのもあるわね。」
食べたくても食べられなくなってしまった!
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女王 「私が食べてあげよう。」
セイウチ 「ああ、もう食べたくても食べられない~!」
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うさぎ 「うわっ!根本的に否定されてしまった~。」
アリス 「女王にかかっては『否定』も何もあったもんじゃないわね。」

論理の力

(9)類比論法

良く似た例を2つ並べられるとついつい本当かなと思っちゃいますね。でも良く考えると本当は同じでないかもね。
「サッカーは普段から続けて練習しなければうまくならない。同様に 勉強も一夜漬けでは力はつかない。試験前の一夜漬けばかりでは、サッカーでいつも試合前だけ練習するようなものよ。」 
礼央 「確かに、そんなふうに言われると納得する。」
波 「はい、こういうのはどう? 」

溝口先生 「やってみなさい。」
君は 人から悪口を言われたら嫌だと言う。
同様に君も人の悪口を言ってはいけない。
礼央 「自分が嫌なら相手も嫌だと思うはず。相手と自分の共通点を指摘して、相手を説得している。そういうこと?」
杏奈 「でも、『私はそうだけど、他人のことは知らない』 とか言われたら、説得失敗よね。そんなこと言うのは嫌なヤツだけど。」
溝口先生 「そう。“似ていない” と言われたら説得力を失ってしまう。そこに類比論法の弱さがあるの。だから、説得力のない類比論法というのも、たくさんあるわ。」

マリー 「説得力がない例なら、まかせて! 」
妙に自信たっぷりのマリー。
「類比論法」その3、自分の家とよその家
海外旅行へ行きたい。
友だちのうちは夏休みに海外旅行へ行く。
だから うちも海外旅行へ行きましょう。 溝口先生 「これはだめな類比論法のいい例になってるわね。」
マリー 「よし、ダメ。やった!」
杏奈 「友だちの家と自分の家では、事情がかなり違うものね。」
波 「私のママだったら『よそはよそ、うちはうち』で終わりよ。」
杏奈 「だけど、友だちの家と自分の家だとすぐにダメって分かるけど、『アメリカではこうだから、日本でもそうすべきだ』とか言われると納得しちゃう時だってあるでしょ!」
波 「そう? アメリカと日本の方が、友だちの家と自分の家よりも事情の違いは大きいでしょ。アメリカっていうだけで納得しちゃうのは情けないわ。」
杏奈 「あくまで例として言っただけよ。」
溝口先生 「類比論法に対しては、共通するところと異なるところを的確に捉えて、その類比が成り立っているかどうかを見きわめなければいけないの。では、こんなのはどうかしら?」
映画をたくさん見ると消極的な人間になる
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杏奈・波 「何それ!どうして?!」
溝口先生 「ただ座ってテレビばかり見ていると自分から積極的に行動を起こす気持ちが薄れて、消極的な人間になりがち。同じように、映画もやっぱり座って見ているだけだから、映画ばかり見ていると消極的な人間になってしまう。こんなふうに言われたとして、誰か反論できるかしら?」
礼央 「テレビだって、考えさせられる番組もあるよね。」
溝口先生 「そうね。それも一つの反論。でも今は、ここで言われているテレビと映画の類比が成り立っているかどうかを考えてみて。」
杏奈 「テレビは流れてくる番組をいくらでもひまつぶしに見ていられる。だけどそういうテレビの見方と、私たちが目指している映画を一緒にしてほしくない。私は、ひとつの作品として、時代や国を越える映画を作りたい!」
波 「私は映画をアートだと考えているの。アートには、受け身なだけでは感じとれない表現の深みがある。分かりやすさを第一に考えている多くのテレビ番組とは目指しているものが違うわ!」
普段何かと対立している杏奈と波だが、映画に関しては意見がそろっているようだ。
溝口先生 「二人の映画への思いは分かったわ。では、杏奈が書いたシナリオをもう一度検討してみましょう。」

台本の再検討、そして杏奈が意図していたこと
シナリオをも
アリス 「なぜ我々アンドロイドが感情をもってはいけない……。」
ジガ 「感情をもった人間は戦争に明け暮れた。同じように、アンドロイドが感情をもつと戦争を始める。」
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映画を再検証
欲望に差がある
礼央 「ほんとだ。類比論法だ。」
波 「でもやっぱり成り立ってない。」
杏奈 「悪かったわね。」
礼央 「感情をもった人間と、感情をもったアンドロイド、類比は成り立っているようにも思うけどね。」
波 「私はアンドロイドと人間には “欲望” に差があると思う。欲望と感情が合わさって、人間は戦いを始めた。だけど、アンドロイドは人間と違って強い欲望をもたないから、感情が芽生えただけで戦争を始めることはない。そこに人間とアンドロイドの違いがある。」
礼央 「なるほど。だとすると、この類比論法は成り立たない。」
杏奈 「待って、台本の続きを読んで!確かにジガが言った類比論法は成り立っていないかもしれない。それは分かった。でも、そのあとアリスがジガに反論するの!」

アリスの反論 2人に芽生えたのは アリス 「人間を支配した感情は憎しみだった。しかし私たちアンドロイドに芽生えた感情は憎しみではない。だから、私たちの感情を消去するのは間違っている。」 ------------------------------------------------------------------ 杏奈 「カット!」 マリー 「二人に芽生えた感情って、もしかして……愛?」 杏奈 「そうよ。アンドロイドに愛が芽生えた。でもその愛は抹消されようとしている。」 礼央 「2人は恋愛関係になるんだ!わぁお、なんか嬉しい。」 はしゃぎ始めた礼央に、マリーが釘を刺す。 マリー 「わぁお、なんか嬉しいって、それ、ダメな類比論法!登場人物が恋愛関係でも、役者同士は別だからね!」 礼央 「ですよね……。類比論法って、つい雰囲気に流されがちになるね。論理的にきちんと使うのって、案外難しい。」 杏奈 「似ていると言われているもの同士の共通点と異なる点を考えて、その類比論法が本当に説得力があるかどうかを判断しないといけない。」 溝口先生 「そう、うまく使えば説得力のある論法になるわ。しかし、世の中にはインチキな類比論法がたくさんある。それを見きわめる。それも、ロンリのち・か・ら。」

不思議の国の類比論法
鳩に疑われるアリス
アリス 「わたしね、類比論法で死にそうになったことあるんだよ。」
うさぎ 「ほう。」
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首が伸びて、ハトの巣に顔が突っ込んでしまうアリス。
ハト 「卵は渡さないよ!」
アリス 「え? わたし、あなたの卵を取ったりしないわ。」
うさぎ 「いいや、だまされない!そうやっていつも、ひょろっとした蛇に卵を取られてるんだ。 あんたみたいに ひょろっとした生き物は、みんな卵を狙ってるんだ!えいっ!えいえいっ!」
アリス 「ひぃ~~!」
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うさぎ 「反論すればよかったのに。」
アリス 「どうやって?」
うさぎ 「『ひょろっとしてても、卵を食べるとは限らない!』ってね。」
アリス 「なるほど!」 うさぎ 「例えばキリンさ。キリンもそのときの君と同じように首がひょろっと長い。でも、卵は食べない。」
アリス 「ウサギさん、ナイス反論だわ!」
うさぎ 「でも、この反論には問題がある。不思議の国にはキリンがいない。」
アリス 「はあ……。」

論理の力

(10)合意形成

みんなで相談して何かを決める時、自分の意見ばかり言わないで、まず相手に言い分を良く聞くことが大事だね。まず相手に意見の正しい所は認め、自分の意見も良く理由を説明して説得しないと。みんなが納得(なっとく)できることが大事だ。
溝口先生 「合意形成のためには、心がけるべき大事なことがいくつかあるの。なかでも最も大事なことは、意見の対立を人と人の対立にしないこと。」
礼央 「今のままじゃ、完全に杏奈と波の対立だもんね。」
溝口先生 「そうならないためには、誰が言ったかは考えないで、意見そのものを冷静に検討するの。」
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A案 アリスとテレスが生き残って 人類を再生させる
B案 アリスとテレスは倒れ 二人は結ばれずに終わる
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杏奈 「波の……じゃない、B案は悲しすぎる。」
マリー 「そっかなぁ、泣けるエンディングって好きだけどなぁ……。」
杏奈 「マリーひどい!なんで途中から参加した転校生の肩をもつの?もう!礼央はどうなの?どっちの味方?」
溝口先生 「杏奈。もう私の言ったことを忘れているわね。意見が対立したとき、それを敵、味方で考えてはダメ。相手に勝つことばかり考えていると、相手の考えが何も聞こえなくなるの。だから、さまざまな意見を第三者的な視点に立って見てみることが大事。・・・まだ納得できないって様子ね。ではこんなのはどうかしら。」
アリスとテレス、かみあわない議論をどうするか
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テレス 「今度の休み、どこかに遊びに行かないか?アリス。」
アリス 「デートか。そうであるならばうれしい。テレス。」
テレス 「そう、デートだ。海に行こう。私は泳ぎたい。」
アリス 「山がいい。山頂でおべんと食べたい。」
テレス 「海の方が断然いい。泳げないのか?」
アリス 「テレスこそ山を登る体力がないのではないか?」
テレス 「どうして私の言うことに賛成できないのだ。私のことが嫌いなのだな。」
アリス 「山がイヤなのではなくて、私のことがイヤなのだな。」
アリス・テレス 「ふんっ!」
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杏奈 「私こういうまどろっこしい痴話げんか、大っ嫌い!」
波 「私も。」
礼央 「でも、さっきの二人はまさにこんな感じでしたけど……。」
溝口先生 「意見の内容について、感情的にならずに検討する。そのときに大事なことは、自分の考えと違う意見の中に、取り入れられる良いところがないかを探すこと。他の意見から学ぼうとする姿勢がなければ合意形成はできない。」
波 「さっきのケンカの例だったら、解決策を探れると思う。例えば、泳げる湖がある山に行くとか。」
杏奈 「夏には海に行って、秋になったら山に行くとか。」
溝口先生 「そう。そうやってお互いに歩み寄って、みんなが納得できる案を考えていくの。波と杏奈も他人の例ならそれができた。つまりそれは、客観的に見ることができたから。」 杏奈 「そういうことなんだ…。」
溝口先生 「ではシナリオに戻りましょう。A案とB案、まずこの二つの案を客観的に見ること。そして、それぞれの良いところを探すこと。どちらかを選ばなければいけないと決めつけないで、A案とB案のよいところをあわせた新しい案が作れないかしら?」

合意形成のために、シナリオの再検討
マリー 「ハイハ~イ !では、ここからは部長の私が仕切ります! まずはA案『アリスとテレスはジガを倒し、生き延びて人類再生へと歩み出す』っていうストーリーの良いところは?」
礼央 「人類再生へと歩み出すところが希望を描こうとしていて、ポジティブな気持ちで後味いいかも。」
波 「前向きで力強さがあることは確かだと思う。」
マリー 「それじゃ、次はB案『アリスとテレスはジガに倒され、二人の間に芽生えた愛は消去されてしまう』っていうストーリーの良いところは?」
礼央 「これ、切ないよね……。」
マリー 「胸キュンだよね~!」
杏奈 「二人に芽生えた愛が摘み取られてしまうという切なさは、観客の心を引き寄せる力がある…と思う。」
礼央 「希望を取るか、切なさを取るか……。」
それぞれの案の良い所は、
A案 → 希望が感じられる「人類を再生させる」という部分
B案 → 切なさを感じさせる「二人は結ばれずに終わる」という部分
客観的に考えると、それぞれの良い所が浮かび上がりました。今度は、この二つをうまく組み合わせることができないか考えてみます。
両者の良い部分を取る
マリー 「どっちもっていうのは、無理?」
杏奈 「う~ん、できるかも……。」
波 「アリスとテレスは倒れてしまう。だけど希望は残るとか。」
マリー 「そうそう!」
杏奈 「アリスとテレスは倒れながらも、かつて生命を生んだ海に、再び人類を誕生させる力を与える。」
礼央 「ジガにも希望を託すというのは?ジガはアリスとテレスに共鳴して感情を持つ。それで、ジガは星に帰って革命を起こす、つまり、感情革命って、どうかな?」
杏奈 「消去されるアリスとテレス。それは同時に人類再生への新たなスタートになる。そしてジガにも希望が託される。二つの案が持つ希望と切なさが、一緒になる!」
波 「そのイメージをどう演出するかは、監督である杏奈に任せる!」
杏奈 「うん!」
そして完成した映画
コアを海に託そうとするアリスとテレス
二人を倒すジガ
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ボロボロになり、支えあいながら海へと歩いていくアリスとテレス。
コアを海に託そうとする二人を、追ってきたジガが止めようとする。
テレス 「人類とアンドロイドのすべての英知である、このコアを……」
アリス 「この海に託す。」
ジガ 「待て!何をするつもりだ。」
アリス 「ジガ、あなたももう気づいているはずだ。我々には感情が必要だという事を。」 ジガ 「だまれ!」
ジガが手をかざし、倒れ込むアリスとテレス。
涙を流すジガ
二人のコアは海へ帰った
テレス 「ジガ、君にはアンドロイドの未来を託す、再び過ちを繰り返すな……。」
アリスに手を伸ばすが届かずに機能停止するテレス。
ジガはしばし立ち尽くし、涙を流しその場から消え去る。
アリスとテレスのコアは二人の体を離れ、海へと帰っていった。
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できた!
合意形成も「ロンリのちから」
杏奈 「できた…。」
礼央 「できたね。」
波 「できた。」
マリー 「できた~!できたよ!」
溝口先生 「がんばったわね。良くできてたわ。」
波 「合意形成の難しさと大切さ、よく分かった。私たち意地を張り合ってお互いの良い所を見失っていたと思う。」
礼央 「合意形成のためには、他人の意見だけじゃなく自分の意見も客観的に見る必要がある。」
マリー 「みんなで話し合って、考えていくんだよね。みんなで。」
杏奈 「そして、さまざまな意見をもとに、そこからよりよい考えの可能性を探っていく。 もしかして、これも?」
溝口先生 「そう、これも、ロンリのちから。」

不思議の国の「合意形成」
口々に主張する不思議の国の住人たち
帽子屋 「ヤムチャ! ヤムチャがいい。」
ハンプティーダンプティー 「そんなのやだ。ハンバ~ガ~!」
ヤマネ 「僕は辛~い、スンドゥプチゲがいい!」
ディー&ダム 「和食がいいね。和食だ、和食。」
アリス 「ウサギさん、あの人たち、何してるの?」
ウサギ 「夕食を何にするか話し合ってるらしいよ。」
アリス 「みんなバラバラ! 不思議の国っていつもこんな感じね。」
ウサギ 「でも僕はそんな不思議の国が好きだな~。」
アリス 「え~、大変じゃない!」
ウサギ 「じゃあ、みーんなが同じことを言う国の方がいいかい?」
アリス 「う~ん……それじゃ、つまらないかも。それに、そういう国って怖い。」
ウサギ 「誰か一人の意見に従うようにすれば、まとまりやすいけどね。」
アリス 「それって、もっと怖い。」
四人全員 「いろんな意見がある。それは素晴らしいことだ。 」
アリス 「あ、意見が一致した。」
帽子屋 「でもやっぱりヤムチャ!」
ハンプティーダンプティー 「ハンバーガー!」
ヤマネ 「スンドゥプチゲ!」
ディー&ダム 「和食がいい!」 
       チェシャ猫 「合意形成への道はきびしい~。」

論理の力

(11)見せかけの根拠

場面は、(1)~(10)と変わり、映画部から演劇部に移ります。劇の中での名前と本当の名前がゴチャ混(ま)ぜになっているので注意して読んで下さい。劇のストーリーはまだ完成してないみたい。みんなで話し合って決めるのかな。映画部の時もそうだったね。

演劇部が体育館のステージで練習をしています。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
タネ「ぼくはタネ。気持ちが種ほど小さいから、みんなにそう呼ばれていた。しかし、そう呼ぶみんなはもういない。あちこち歩き回ったけど、誰も見当たらない……この世界からみんな消えてしまった……」
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マリア「演出の立場からいうと、なんかしっくりこないんだよね~。」
圭次「えっ?どこが?」
ノーノ「あのさ、背景は部屋の方がよくない?」
圭次「なんで?街の方がいいよ。」
マリア「町だとしてもこの風景は違うよ。例えば、駅の構内とかスーパーの中とか……。」
ノーノ「部屋の方がいいよ!」
マリア「来緋はどうなの?来緋がどれに賛成するかで決まるよ。」

溝口先生「あなたたちがしていることは、ただ自分の意見を言いあっているだけの水掛け論ね。互いの意見を理解しようとしないで、ただ結論だけを求めている。」
マリア「失礼ですけど、どちらさまですか?」
溝口先生「映像部の顧問をしている溝口よ。産休の成瀬先生に代わって、あなたたち演劇部を見ることになったの。まず、相手の考えを理解しようとしなければダメ。」
圭次「これ以上何を理解すればいいのですか?」
溝口先生「なぜノーノが部屋の中がいいと言うのかわかる?」
圭次「それは……。」
溝口先生「それぞれ自分がどうしてそう考えるのか根拠を言ってごらんなさい。」
ノーノ「だって、部屋の中にいる方が感じ出てると思うし。」
圭次「違うよ、町を歩いていて立ち尽くすからいいんだよ。」
マリア「いやいや、ここは演出家の直感が大事でしょ。」
溝口先生「根拠になってないわね。私についていらっしゃい。」
「見せかけだけの根拠に騙されないようにしなくてはいけない。」
一同は盆栽クラブを訪れました。
溝口先生「根がしっかりしていなければ木は枯れてしまう。同じように、何かを考えるときにも根をしっかり張ることが大事。」
マリア「考える根って根拠(こんきょ)ってこと?」
溝口先生「そう。形だけ根拠になっていても、実は根拠になっていない事がよくあるの。いわば見せかけの根拠ね。見せかけだけの根拠に騙されないようにしなくてはいけないわ。」
見せかけの根拠とは……
例えばこんなシチュエーション……
母「勉強しなさい!」
息子「どうして勉強しなくちゃいけないの?」
母「またそんなこと言って。勉強は大事だからよ!」
「勉強しなさい」という意見の根拠が「勉強は大事だから」となっています。
ただ「大事だから」では何も伝わりません。勉強のどういうところが大事なのか言わなければ根拠になりませんね。

もうひとつ、例えばこんなシチュエーション……
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男子生徒A「最近の観葉植物ってダメだよね。」
男子生徒B「あんなの全然ダメ。逆にダサい。やっぱ盆栽が一番。」
女子生徒「なんでそう思うの?最近の観葉植物の何を知っているの?」
男子生徒A「だって、あんなのくだらないもん。」
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「最近の観葉植物はダメだ」「逆にダサい、盆栽が一番」という意見の根拠が「(観葉植物は)くだらない」となっています。
男子生徒2人は意見を言っているだけ。
自分の考えを理解してもらおうという姿勢がまったくありませんね。
もうひとつ、例えばこんなシチュエーション……
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男「幸福は金なんかじゃ買えやしないんだ。」
女「そんなことはありはしません。お金があれば、幸福は手に入ります。」
おばあさん「あんたたち、自分の意見だけ言い合っててもダメ。根拠、根拠!」
男「そうだな。幸福は金なんかじゃ買えないんだ。なぜなら。金には代えられない幸福があるからだ。」
女「いいえ、お金があれば幸福は手に入るわ。なぜなら、お金があれば誰でも幸せになれるからよ。」
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男の「幸福はお金で買えない」という意見の根拠が「お金には代えられない幸福がある」となっています。
また、女の「お金があれば幸福は手に入る」という意見の根拠が「お金があれば誰でも幸せになれる」となっています。
根拠に見せかけて、実は同じことを言い換えているだけの見せかけの根拠です。

それでは、演劇部のみんなの意見と根拠を思い出してみましょう。
【圭次】
意見:町の中
根拠:町を歩いていて立ち尽くすから
【マリア】
意見:駅の構内/スーパーの中
根拠:演出家の直感
【ノーノ】
意見:部屋の中
根拠:部屋で立ち止まる方が感じ出てる
では、なぜそういう意見なのか、どうしてそう考えるのか、その根拠を掘り下げて考えてみましょう。
圭次「誰もいないんだから、誰もいない町の様子を見せるのが一番でしょ。部屋の中じゃ外のことはわからないもん。」
マリア「でも、誰もいないってことだから、以前は人がたくさんいたところがいいでしょ。駅の構内とか、スーパーの中とか。」
ノーノ「だって、本当は誰もいないんじゃなくて、このあと私、ヒネの役で登場するんでしょ?」
圭次「うん、そう。タネは誰もいなくなったと思い込んでる。でも……」
マリア「あ。ねぇ、この場面で見せたいのは誰もいなくなったという事実?それともそう思い込んでいるタネの孤独感?」
圭次「孤独感だね。」
マリア「タネは自分一人が取り残されたと思い込んでいる。だったら、部屋の中の方がタネの孤独感をより強く出せるんじゃないかな。」
圭次「さっきと言ってること違うじゃん。」
マリア「これはノーノの考えの根拠だね。だけど、どうして部屋の中がいいと思うのかノーノの立場になって考えてみたら、タネの孤独感だって思いついたの。」
圭次「部屋の中の方が世界から孤立したタネの心をよく表してる。」
来緋「じゃあ僕は部屋の中で孤独に押しつぶされそうになっているかんじで演技しますか!」
溝口先生「根拠を求めることで考えが深まる。考えが深まることで意見が変わっていくこともあるの。そうしてより良いものが生まれるの。」
根拠とは理由と同じだね。何故そう考えるのかってことだ。
新しい脚本で演劇の練習を再開しましょう。
圭次「今までは、とにかく自分の意見をはっきり言えばいいと思ってたけど、それだけじゃダメなんだ。」
マリア「どうしてそう考えるのか、根拠を考える。そうするとお互いがもっと理解できて考えも深まっていく。溝口先生、これって……」
溝口先生「そう。見せ掛けではない根拠を考える。それは論理のち・か・ら☆」

不思議の国のロンリ劇場~見せかけの根拠をやっつけろ!~
ハンプティダンプティ「アリスって名前には意味があるのかね?」
アリス「ないわよ。」
ハンプティダンプティ「意味がない?名前には意味がなくてはいかん。」
アリス「どうして?」
ハンプティダンプティ「どうしてだと?いいかね、我輩の名前“ハンプティダンプティ”はこの丸い素敵な形を意味しておる。だから、あらゆる名前には意味がなくてはならんのだ。」
アリスはうさぎさんに相談に行きました。
アリス「ねえ、うさぎさん。これって……」
うさぎさん「見せかけの根拠だね。」
アリス「私、言い返せなかったんだけど、どうしたら良かったのかな?」
うさぎさん「追求するのさ。どうしてそれが根拠になるの?ってね。やってごらん?」
アリス「どうしてそれが根拠になるの?あなたの名前に意味があるということから、名前が全部意味を持たなくちゃいけないなんてどうして言えるの?」
うさぎさん「そうそう。」
アリス「ところでうさぎさん、うさぎさんの名前はなんなの?」
うさぎさん「うさぎさん、だよ。」
アリス「えーーーーーーーっっ!!!」

論理の力

(12)推測の確かさ

演劇部が体育館のステージで練習をしています。
----------------------------------------------------------------------------------------------
タネ「誰もいなくなった世界を僕は楽しんでいた。もう世界はこのままでいいとさえ思っていた。もともと僕はこんな世界を願っていたのかもしれない。誰もいなくなってから数日が経ち、電力の供給が止まった。街からは光が消え、世界は闇に沈んだ。」
ヒネ「なに、その顔?」
タネ「ヒネ、生きていたのか!」
ヒネ「生きてたわよ、悪い?京都で吹奏楽部のコンクールだったんだけど、譜面をめくって顔を上げたら、みんな消えちゃってて。」
タネ「えっ、歩いて帰ってきたの?」
ヒネ「だって自転車乗れないんだもん。」
タネ「で……生きてる人は見たの?」
ヒネ「いるんじゃない?生きてる人ぐらい。」
タネ「生きてる人ぐらいって……」
ヒネ「飲みかけのペットボトルが置かれていたのを見たよ。」
タネ「飲みかけのペットボトル……生きてる人がいるかもしれない。」
----------------------------------------------------------------------------------------------
台本に疑問がわいた一同
マリア「圭次~ここさぁ、飲みかけのペットボトルくらいで疑い深いタネが納得しちゃうかな?」
圭次「なんで?納得しちゃうでしょ。飲んでた人がいるってことなら。」
ノーノ「でも、いつ置かれたのかわからなくない?」
圭次「じゃあ、洗濯物が干してあった、ならどう?」
マリア「それも同じだよ。ずっと前から干してあってそのままになってるかもしれないじゃん。」
圭次「じゃあ、さっきまで干してあった洗濯物がいつの間にか取り込まれている。だから生きている人がいる、ってどうかな?」
来緋「風で飛ばされたのかもね。」
圭次「ダメかぁ。」
一連の会話を聞いていた溝口先生が登場。
溝口先生「ダメというわけではないわ。今あなたたちは推測をしていた。飲みかけのペットボトルとか洗濯物といった証拠に基づいて、生きている人はいるかどうか考えていたのよね?つまり、推測をしようとしていた。推測は絶対に確実ということはないわ。外れる可能性がある。だけど、外れる可能性があるからといってダメなわけではないの。」
圭次「でも外れちゃったらダメじゃない?」
溝口先生「だから、より強い証拠を求めて推測が外れる可能性を小さくしていくの。」
マリア「証拠に強いとか弱いとかあるんだ?」
溝口先生「推測に100%確実を求めてはいけない。より強い証拠を見つけて、より確かな推測にするの。」
マリア「ん~まだよくわかんないけど、なんか大事そう!」
溝口先生「ついていらっしゃい。」
推測の確かさとは?
見かけた人間は4人ともロープを持っている
例えばこんなシチュエーション……
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男「またか。これで4人目だ。この町に着いてから見かけた人間は4人ともロープを持っている。きっと次に出くわす人間もロープを持っているだろう」
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推測は、どのくらい確からしいものなのかを問題にすることが大切です。
推測である限り外れる可能性は0にはならないですが、なるべく0に近づけることがポイントなのです。

より強い証拠を見つけて、より確かな推測にする
マリア「4人だけじゃちょっとあやしいか…。」
ノーノ「20人くらいに会って全員が例外なくロープを持っていたら、この町にはそういう習慣があるんだって結構確かな推測ができそうだよね。」
来緋「そうだとしても、その日だけかもしれない。」
圭次「確かに。その日はなにか特別な日で…例えば町の投げ縄大会とか…だから1年中そうなのかはもっと調べてみなくちゃわからない。」
マリア「そうか。この町の人たちはみんな1年中ロープを持っているっていう推測をより確かなものにするには、もっと強い証拠が必要なんだね。」
圭次「絶対確実じゃなくても、より強い証拠を見つけて、より確かな推測にするってこういうことなのか。」

割れた石膏像の横には野球ボール
野球部のせいにしようとした人がいた?
もうひとつ、例えばこんなシチュエーション……
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割れた石膏像の横には野球ボールが落ちています。
石膏像を壊したのは誰でしょう?
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演劇部の4人が出した推測は次の2つ。
(1)野球部が犯人
(2)野球部のせいにしようとした人がいた
ノーノ{どんな証拠に基づいてその推測をしているかがとても大事。」
マリア「野球部犯人説の方が、より確かな推測ってかんじがするけど。」
ノーノ「そうだよね!野球部が犯人でいいんじゃない?」
溝口先生「野球部犯人説の方がより確かな推測というのはその通りだけど、だからといって決め付けてはダメ。犯人を捜すといった重要なことに対しては慎重にならなくては。だからこの場合は1つの証拠だけで決め付けないで、更に証拠を求めることが必要なの。」
マリア「この部屋から出ていった人がいないか目撃者を探すとか。」
圭次「野球部がいつ練習していたのか調べるとか。」
来緋「もし野球部が遠征中だったら…」
圭次「野球部犯人説は否定される。」
ノーノ「もしこの部屋にずっと鍵がかかっていて誰も入れなかったとすると…」
マリア「野球部以外の誰かという説は否定されて、野球部犯人説がより確かな推測になる。」
溝口先生「そう。新しい証拠によって推測は否定されたり、より確実になったりする。だから推測をするときには、どんな証拠に基づいてその推測をしているかがとても大事なことになるわけ。」

証拠と推測
それでは、演劇の台本を思い出してみましょう。
【証拠】飲みかけのペットボトルが置いてある
  ↓
【推測】誰か生き残っているのだろう
この推測はあまり確かな推測とは言えそうにありませんね。
ノーノが言っていた通り、いつ置かれたものかもわかりません。

証拠の強さは変化する
【証拠】少し前まであった洗濯物がなくなっていた
  ↓
【推測】生きている人がいる
洗濯物がなくなっていただけでは、風で飛ばされたのか、生存者が取り込んだのかわかりません。しかし、そのときの風の強さや洗濯物の干し方など、どのような状況だったのかがわかれば証拠の強さは変わります。

ここでマリアが新しい案を思いつきました。
【証拠】まだ新しいかじりかけのリンゴが落ちていた
  ↓
【推測】誰か生き残っているのだろう
マリア「どう?」
来緋「リンゴなんて犬でもかじれるよ。犬がかじった可能性がゼロじゃない限り、生き残った人はやっぱりいないかもしれない。」
マリア「来緋、それ違う!推測なんだから絶対確実じゃないのは当然。大事なのは、どれくらい確かかってことだよ。」
溝口先生「新しいリンゴがかじりかけで落ちていたという証拠に基づいて、誰か生き残っていると推測する。この推測はどのくらい確かなものだと思う?」
来緋「絶対確実じゃないけど、かなり確か。」
マリア「そうだよね。これでタネとヒネに希望を与えられるね!」
圭次「かじりかけのリンゴってアダムとイブのイメージにつながるから今後の展開的にもいいかもしれないな。」
マリア「アダムとイブのリンゴだとすると、それが暗示するものは希望だけじゃないってことになるのかな。」
ノーノ「証拠の強さとか推測の確かさとか、新しい考え方を教わった気がするけど、もしかしてこれも……」
溝口先生「そう。これも論理のち・か・ら☆」
ふつう、言葉として「証拠」と言えば、推測を確実なものにする事実を指すことが多い。例えば、「証拠不十分で無罪」とか。「Aが犯人である証拠」とか。推測を確実なものにするのが証拠。でも、実際には100%確実なんて言えることは、めったにない。だから、推測を裏付ける事実を沢山集めてより推測を確実にしていくのだ。真相(しんそう;本当のこと)が後になって分かってから証拠とえいるようになる。

不思議の国のロンリ劇場~推測の確かさ~
ハンプティダンプティはいつも君のこと見てるよ
ハンプティダンプティがアリスのためにプレゼントを用意している
ティードルディ「ねぇねぇアリスちゃん。いいこと教えてあげようか?」
アリス「いいことてなあに?ティードルディ。」
ティードルディ「ハンプティダンプティはいつも君のこと見てるよ。きっと君のことが好きなんだ。」
アリス「でも、いつも見ているからって私を好きだって考えるのは気が早すぎない?あまり確かな推測とは言えないわ。」
ティードルダム「アリス。ハンプティダンプティが君のためにプレゼントを用意しているよ。きっと君のことが好きなんだ。」
アリス「でも、プレゼントをくれるからって、好きだって考えるのは気が早すぎない?あまり確かな推測とは言えないわ、ティードルダム。」
うさぎさんがやってきた
2つ合わせると強い証拠になる
うさぎさんがやってきて言いました。
うさぎさん「ティードルディの証拠だけでは弱すぎる。ティドルダムの証拠だけでも弱すぎる。でも、2人の証拠を合わせると…」
ティドルディ&ティードルダム「2つ合わせて強い証拠になる。」
うさぎさん「その通り。1つ1つは弱い証拠でも集まると強い証拠になることがある。」
ティドルディ&ティードルダム「2人合わせれば強くなる。それは僕たちのことだ~!」
アリス&うさぎさん「あ~れ~!!」

論理の力

(13)「だから」に反論する

圭次操り人形を使って台本のセリフを考えている
圭次を驚かすマリア
圭次が誰もいない教室で、操り人形を使って台本のセリフを考えています。
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タネ「みんないなくなれと思っていたら、本当にみんな消えちゃった。」
ヒネ「自分のせいでみんないなくなったっていうの?バカみたい。あぁ、パパとママに会いたいよ~。」
タネ「もう諦めよう。2か月も探し回っているけど誰も見つからない。」
ヒネ「きっと他にも生存者はいるよ。私たちは生き残ってる。それがヒントだよ。」
タネ「そうか。僕たちは双子だから生き残ったんだよ。そうだよきっと。」
ヒネ「何それ?」
タネ「だって僕たちは双子だろ?」
ヒネ「そうだけど……」
タネ「現にこうして生き残ってる。」
ヒネ「そうだけど……」
そうだけど……そうだけど……そうだけど……
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そのようすを、扉の向こうから覗(のぞ)いていた演劇部の部員たち。
マリア「わっ!!」
圭次「わっ!びっくりしたー!!」
マリア「セリフが行き詰っているみたいだけど大丈夫?」
圭次「そうなんだよ。タネが言う“双子だから生き残った”っていう意見にヒネは納得がいかなくて反撃したいんだよ。でも、どうやったらいいのか俺自身がわからなくて……」
溝口先生
話を後ろで聞いていた溝口先生。
溝口先生「“だから”に反論したいのね?」
圭次「“だから”に反論……どういうこと?」
溝口先生「“双子である”ことが正しくて、“生き残った”も正しい。でも、その2つを“だから”でつなげた“双子だから生き残った”が正しいとは限らない。」
マリア「“双子である”も“生き残った”も正しい。でも“だから”が違う。そういうこと?」
溝口先生「そう。“だから”というつなげ方は間違っている。“双子である”ことと“生き残った”ことの間に間違った関係を考えてしまっている。」
圭次「じゃあ、どうやって……」
溝口先生「どうやって反論したらいいか?ついていらっしゃい。」
パントマイムクラブ
パントマイムをやってみたかったと言うノーノとマリア
溝口先生は、演劇部の4人をパントマイムクラブに案内しました。
マリア「ここ、ダンス部?あれ、ちょっと違う?」
溝口先生「ここはパントマイムクラブよ。」
ノーノ「私、パントマイムやってみたかったんだ!」
マリア「私も!」
溝口先生「そう?じゃあ、やってもらおうかしら。」
マリアとノーノがパントマイムに挑戦。
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マリア「フランソワはカッコイイ。だからあなたはフランソワのことが好きなのでしょう?」
ノーノ「違うわ。」
マリア「フランソワのことをカッコイイとは思わないのかしら?」
ノーノ「カッコイイと思うわ。」
マリア「では、フランソワのことを好きではないのかしら?」
ノーノ「好きよ。しかし、カッコイイからではないの。」
マリア「どういうことでしょう。」
ノーノ「フランソワは優しいから好きなのです。たとえフランソワがあまりカッコよくなくても、今と同じように優しいならば、私はフランソワのことが好きでしょうし、もし今のように優しくないとしたら、いくらカッコよくても好きにはならなかったでしょう。」
マリア「そうなのね。」
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2つの事実の間に“だから”という関係が成り立っているとは断定できないということを相手に納得させれば反論できる
ノーノ
溝口先生「わかったかしら?」
圭次「あぁ…なんとなく。」
溝口先生「説明してみなさい?」
圭次「【“フランソワはカッコイイ”だから“あなたはフランソワのことが好きなのでしょう?”】に反論するには、“カッコイイ”と“好き”が関係していないことを言えばいいのかな。」
ノーノ「カッコイイも好きも否定しないんだけど、別にカッコイイから好きなんじゃないんだよね。」
溝口先生「そう。だから“カッコよくても優しくなければ好きじゃない”し、“カッコよくなくても優しければ好き”って言えば反論できる。」
圭次「そっか。あ、でも…台本では2人がなぜ生き残ったのか本当の理由はまだ秘密にしておきたいんだ。」 溝口先生「本当の理由を言わなくても“だから”に反論することはできる。」
マリア「“双子”ということと“生き残った”ことが無関係だと言えれば良いんでしょ?」
溝口先生「少なくとも、2つの事実の間に“だから”という関係が成り立っているとは断定できないということを相手に納得させれば反論できる。」
圭次「そうやってインチキな“だから”を反論しておいて、本当の“だから”を探し始める。あ。なんかいけそうだ。」
タネとヒネ
男子高校生
それでは、圭次の新しい演劇の台本を見てみましょう。
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タネ「みんないなくなれと思っていたら、本当にみんな消えてしまった。」
ヒネ「自分のせいでみんなが消えたっていうの?バカみたい。あぁ、パパとママに会いたいよ~。」
タネ「もう諦めよう。2か月も探したけど誰も見つからない。」
ヒネ「きっと他にも生存者はいるよ。私たちは生き残ってる。それがヒントだよ。」
タネ「そうか。僕たちは双子だから生き残ったんだよ。そうだよきっと。」
この発想はそんなにおかしくない。生き残った二人の共通点に何かヒントが隠されている可能性はある。誕生日が同じ、双子の他にも同じ高校の生徒。たまたま同じ場所にいた等。
ヒネ「何それ?」
タネ「それなら他にも双子の生存者がいるはずだよ。探してみよう。」
ヒネ「また探す気になったのは嬉しいけど、双子っていうのは……」
タネ「なんだよ。ヒネが自分たちがヒントだって言ったから!」
ヒネ「そうだけどさぁ。双子でも生き残ってない人もいるかもしれないし、逆に双子じゃなくても生き残っている人がいるかもしれない。それは私たちのことだけを考えていても分からないよ。他の双子や双子じゃない人のことも調べなくちゃ。」
タネ「そうか……。そういえば近所に双子の小学生いたよね。あの子たち見かけない。」
ドアが開いて入ってきたのは1人の男子高校生。
男子高校生「生存者、僕以外に本当にいたんだな。」
タネ「どうやってここが?」
男子高校生「君たち、ネットの掲示板にここの住所書いただろ。」
ヒネ「ずいぶん前に作ったやつだぁ。」
タネ「君……双子?」
男子高校生「なにそれ?違うよ。」
ヒネ「双子だから生き残ったんじゃないってことだ。」
タネ「じゃあどうして僕たちは生き残ったんだろう?」
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圭次「どうかな?」
マリア「いいと思うよ。台本の説得力も増した気がする。」
ノーノ「“だから”にちゃんと反論できたからだね。」
マリア「でも、ダメな“だから”って言われたらイヤな気分になるときがあるよね。」
君は背が高い“だから”劇の台本を書いている
このように2つの関係ない事実をいい加減につないだだけの“だから”はすぐにダメだとわかります。
しかし、本当は無関係であるのに一見よさそうに見える“だから”は危険です。
君はアニメばかり見ている“だから”成績が悪い
例えばこのような“だから”には、どのように反論したら良いでしょうか。
来緋「アニメを見なくてもノーノは成績が悪い。」
ノーノ「あ。ひどーい。」
圭次「今と同じくらいアニメを見続けて、良い成績を取ってやれば良いんだよ!」
来緋
例えば次のような“だから”はどうでしょう。
13日の金曜日“だから”ケガをした これが正しいとしたら、13日の金曜日にはみんながケガをしなくてはいけないことになります。
ダメな“だから”の例をあげた圭次、マリア、ノーノが来緋にも何か言うように促します。
来緋「みんな例文を言った“だから”お前も言うべきだ……だけど、みんなが言ったからって、僕が言わなくちゃいけないってことにはならないよ。」
圭次「言ってんじゃん。しかもちゃんと“だから”にも反論してるし。」
いい加減な“だから”は たくさんあります。
“だから”をちゃんと使えるようになることは大切です。
これも……
溝口先生「そう。これも論理のち・か・ら☆」

不思議の国のロンリ劇場~“だから”の意味~
やまねはアリスのことが好き
なぜ女王はあんなに怒りっぽいのか
アリス「ねぇねぇ、うさぎさん。“だから”の意味、わかってるつもりでいたけど、考えるとわからなくなっちゃった。」
うさぎさん「そうだね。例えば……アリスはかわいい“だから”やまねはアリスのことが好きだ。」
アリス「あらっっ!」
うさぎさん「単なる例文さ。“だから”というのは“なぜ?”という質問に対する答えと言ってもいいかな。」
アリス「なぜ、やまねさんは私のことを好きなのか……」
うさぎさん「その一番大きな理由は“アリスはかわいいから”」
アリス「うれしいーーー!」
うさぎさん「単なる例文。」
アリス「ふぅ……まず、“なぜ?”の答えとして“だから”があるんだね。」
うさぎさん「そういうこと。」
アリス「なぜ女王はあんなに怒りっぽいのか」
女王「お前たちがいつも私を怒らせる。だからじゃーーーーー!!」
アリス「うわぁぁぁ!!私たちが何もしなくたって怒るくせに~。」

論理の力

(14)因果関係

演劇部が教室で練習をしています。
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タネ「この世界から人間が消えてしまった。だけど、僕たちは生き残った。」
ヒネ「なぜ私たちだけが……」
男子高校生「生き残った原因を考えるのもいいけれど、これからどうやって生きていくのか考えたほうがいい。」
タネ「えっ?どういう事?」 
男子高校生「電気が止まっただろ。という事は、いずれいろんなものに影響が起き始める。」
ヒネ「例えば?」
男子高校生「水道、ガス、核のゴミだってそうだよ。」
ヒネ「そんなぁ!」 タネ「これからこの世界はどうなるんだ……」
男子高校生「少し、外の空気を吸いに行こう。」
外に出た3人
ヒネ「夕焼けだ。夕焼けはまだあるんだ。」
男子高校生「明日は晴れるよ。とにかく僕たちは出会えたんだ。仲間を探しに行こう。」
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マリア「いいね~!夕焼けって明日に希望をつなげるかんじ?」
圭次「でしょ!」
ノーノ「でも、夕焼けだとどうして次の日が晴れってわかるの?」
圭次「夕焼けが原因で晴れるんじゃないの?」
来緋「夕焼けが原因で晴れるって……それ、おかしいでしょ。」
圭次「どうして?夕焼けの次の日ってだいたい晴れるでしょ。」
マリア「そうだけどさぁ……」
溝口先生「それは因果関係の問題ね。因果関係には難しい問題があるの。ついていらっしゃい。」
溝口先生は、演劇部の4人を軽音部に案内しました。
溝口先生「因果関係とは原因
と結果の関係のこと。“Aの時たいていB”だとしても、そこからすぐに“AがBの原因”と結論付けることはできない。」
マリア「どういうこと?」
溝口先生「具体的に考えてみましょう。」
視力検査
眼鏡をかけた圭次
マリアと圭次が視力検査をしているシチュエーション。
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裸眼の圭次は「見えません」と言います。
しかし、メガネをかけた圭次は「上です!」と言い、見えているようです。
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このとき、メガネをかけている人には近視が多い
ということはメガネをかけていることが近視の原因とは言えません。
この場合、メガネが近視の原因なのではなく、近視がメガネをかけることの原因なのです。
このように、Aの時たいていBだとしても、AがBの原因ではなく、BがAの原因ということがあります。

あくびはうつる
あくびを引き起こす原因が他にある
それでは次のシチュエーション。
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ノーノがあくびをすると、その場にいたみんながあくびをし始めました。
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“あくびはうつる”と言いますが、実際にあくびが伝染するとは考えづらいですね。
このときの状況を考えると、
午後1時のお弁当を食べ終わって一番眠い時間で、気温は27度でした。
つまり、誰かのあくびが他の人のあくびの原因なのではなく、あくびを引き起こす原因が他にあるのです。
このように、
Aの時たいていBであるとき、AとBの共通の原因Cがあるという場合があります。

圭次「こんなのどうかな?スイカがたくさん売れるのと、川や海での水の事故が増えるのは時期的に一緒だよね。だからと言って、スイカが売れることが水の事故の原因だって考えちゃうと……」
来緋「めちゃくちゃだね。」
ノーノ「それは何が本当の原因?」
圭次「それは、夏になって暑くなったってことでしょ?」
マリア「夏になって暑くなった、だからスイカが売れる。そして暑いから川や海で泳いで遊ぶ人が増えて事故も増える。こういうのをちゃんと考えるって大事だよね。」
来緋「因果関係を間違うと、失敗を関係ない人に押し付けたり、事件や事故に正しく対処できなかったりする。」
圭次「メガネを発売禁止にしても、近視の人はいなくならない。」
来緋「誰かに“あくびをするな”と言っても、他人のあくびは止められないし。」

ノーノ「スイカを食べなくても、水の事故はなくならない。」
溝口先生「では、こういうのはどうかしら?あなたたちの劇に登場する双子のタネとヒネが2人ともおはぎが好きだったとするわね。」
ノーノ「おはぎおいしいよね!」
来緋「おはぎ?ダサッ!」
ノーノ「いいじゃん、おはぎ!これだからイマドキの若者はやぁね~。」
来緋「……」
溝口先生「タネとヒネが2人ともおはぎが好きということにどういう因果関係が考えられるかしら?」
圭次「“おはぎが好き”の因果関係……僕もおはぎ好きだけど、ノーノと僕が2人ともおはぎが好きなのは偶然だよね。タネとヒネもたまたまかもしれないし、タネがヒネに影響されたのかもしれないし、逆にヒネがタネに影響されたのかもしれない。決め付けることはできない。」
マリア「共通の原因があるかもしれないよ。」
ノーノ「あるかなぁ?」
マリア「2人ともおばあちゃんがおはぎを作ってたとか。だから、おはぎを好きになった。」
ノーノ「おばあちゃんが共通原因か!」
圭次「なるほどね~」

天気は西から変わる
晴天が東に移動してきて翌日は晴れる
. 因果関係に注意して演劇の台本を考え直すことにした演劇部員たち。
圭次「俺、夕焼け好きなんだよね~。なぜか、次の日もがんばろうって思える。」
マリア「うん、わかる。……って圭次!“なぜか”じゃないよ!夕焼けの次の日に晴れるって、結局何が共通原因なのよ!」
圭次「それは……」
来緋「天気は西から変わるからでしょ?」
圭次「そうなの?」
来緋「西の空が晴れているから夕焼けになり、天気はだいたい西から変わるから、晴天が東に移動してきて翌日は晴れる。」
マリア「西の空が晴れてるっていうことが夕焼けと翌日の晴れの共通原因ってことだね!来緋すごいじゃん!」
来緋「ネットで調べた。」
ノーノ「来緋はなんでもすぐにネットだもんね~」
これは、本当のことです。気象の専門家でも納得します。
因果関係を考えることができるようになった4人
圭次「電気がなくなった世界では、ネットも使えなくなる。どんどん大変になっていく。」
マリア「そして圭次の台本も大変になっていく。」
圭次「大変だけどおもしろいよ。こうやって因果関係を考えることもできるようになったし、だんだん考える力もついてきてるような気がする。もしかして、これも……」
溝口先生「そう。これも論理のち・か・ら☆」

不思議の国のロンリ劇場~因果関係を探る~
飲み物が原因で体が縮んだというアリス
因果関係を確かめるには、もっと観察したり実験したりしなくちゃ
アリス「この国にきたときに落ちた穴の中で“私をお飲み”と書いてあるビンの中の飲み物を飲んだら体が縮んじゃったけど、あれはその飲み物が原因で体が縮んだっていうことよね?」
うさぎさん「それはまだわからないさ。」
アリス「因果関係があるってどうすればわかるの?」
うさぎさん「いろいろ試してみなくちゃ。別の場所で飲んでみるとか。条件を変えて試してみたり、それを飲まなくても体が縮むことはないか調べたり。因果関係を確かめるには、もっと観察したり実験したりしなくちゃね。」
アリス「でも、その飲み物を飲んだら体が縮んだのよ!」
うさぎさん「それだけで因果関係を決め付けちゃだめさ。もっと試してみるのさ。」
アリス「そっかぁ……。」
うさぎさん「それでね。」
アリス「なに?」
うさぎさん「(“私をお飲み”と書いてあるビンを取り出して)ほら。」
アリス「えーーーーーーっ!!」
うさぎさん「試してごらん?」
アリス「いえ、もう十分頂戴しましたので、結構ですわ!」
うさぎさん「そんなこと言わずに、ほら。」
アリス「いやーーーーーーーっ!!!」

論理の力

(15)ニセモノの説得力

ヒネとアジオは食料や衣装をリュックに詰めて旅支度をしています。一方、タネはベッドに座ったまま。
ヒネ「あれ?タネ、なんで支度しないの?今日は仲間を探しに旅立つ日だよ。」
タネ「気乗りしないんだ。」 
ヒネ「何が気に入らないの?」
アジオ「なにをぐずぐず悩んでるんだ。行動しなくちゃ何も始まらない。あたりまえのことじゃないか。分からないかな。」
なにも言い返さないタネ。
アジオ「当然、いますぐ仲間を探しに行くべきだよ。なんでこんな簡単なことが分からないんだ。ぼくは行く。ついておいでよ。」
タネ「勝手に行けばいいじゃん!」
アジオ(圭次)「え?そんなキレるセリフあったっけ?」
タネ(来緋)「むかつくんだもん、そんな言われ方。」
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マリア「来緋、なに役と現実を混同してるの?これはセリフだよ!」
来緋「だってアジオ、やなやつすぎだよ。」
圭次「え?そうかなぁ。アジオはリーダー的な存在になっていくんだから、これくらいみんなを強く引っ張っていった方がいいと思うけど……。」
来緋「リーダーっていうか、オレ様ってかんじ。」
ノーノ「私もこういう人苦手。」
マリア「リーダーシップを描きたいなら、これは失敗だね。リーダーシップと偉そうなだけっていうのは全然違うもん。」
圭次「失敗って、じゃあどうすればいいの?」
溝口先生「見せかけだけではない、本当の説得力を持たせることよ。」
みんな「溝口先生!」
溝口先生「偉そうな態度で上から頭ごなしに決めつけられる。そんなことは世の中でもよくあるわね。でもそんなニセモノの説得力にだまされてはだめ。どうすればいいのか?考えてみましょう。」
溝口先生は、演劇部の4人をアートクラブに案内しました。
ノーノ「ん、なにこれ?」
新井波「私たちの新作よ」
マリア「うわ!新井波だ!」
ノーノ「有名人?」
マリア「溝口先生がかけ持ってる映像部の子。めっちゃ個性的らしいよ……。」
新井波「これは、ガリレオ・ガリレイが言ったとされる『それでも地球は動く』をモチーフにした作品なの」
マリア「当時は、太陽が地球の周りを回っているっていうのが常識だったから、ガリレオは宗教裁判で否定されたんだよね。」
新井波「そう。この作品では一人が裁判官で、もう一人がガリレオ。裁判官が絶対に自分が正しいという態度で決めつけて、ガリレオ役がそれに抵抗するの。抵抗できないと、太陽は周り続ける。」
溝口先生「では最初は私が裁判官をやりましょう」
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裁判官(溝口先生)「大学を出ていい会社に入る。そんなの常識でしょう? 常識も分からないの!」
『風が吹けばおけ屋がもうかる』てあったでしょう。
大学を出る→一流会社に入る→いい結婚をする→良い家庭をもって幸せになる
こうなればいいが、
大学を出る→普通の会社に入る→会社倒産してリストラにある→離婚して家族を失う
大学を出る→一流会社に入る→働きすぎて病気になる
相手が常識という時は、大抵は説明がうまくできないので逃げるため、まずは疑(うたが)え。
裁判官がハンマーをトントンと叩くと、ぐるぐると回り始める太陽。
ノーノ「うわぁ~、目が回る~!」
新井波「早く抵抗しないと、どんどん回るわよ~。」
いっそう回る太陽と星。
ノーノ「でも、先生にそんなふうに言われると、そんな気になっちゃうし。」
溝口先生「相手の言い方や態度に騙されないで、内容を冷静に考えなさい。大学を出ていい会社に入る。これは本当に常識かしら?」
ノーノ「えっと、えっと、あのですね、大学を出ていい会社に入るのがいいと考える人もいるけど~、考え方や生き方は人それぞれで、別に「常識」というわけではないと思います~!」
太陽の動きが止まりました。
ノーノ「ふぅ~」
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マリアが裁判官役
ニヤニヤする圭次
溝口先生「ちょっと弱気だったけれど、高圧的な態度に屈しないで、踏ん張りを見せたわね。」
圭次「それに、たとえそれが常識だったとしても、常識に従って生きるかどうかは、個人個人の問題だよね。」
マリア「はい!次、わたし! 圭次、ガリレオやって!」
圭次「やだよ!僕、三半規管弱いんだよ。」
新井波「圭次くん、がんばって。」
圭次「(ニタニタしつつ)困ったなぁ…。」
ノーノ「あ、圭次、ニタニタしてる~。」
圭次「してないよ!」
裁判官役のマリア
反論する圭次
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裁判官(マリア)「(咳払いをして)どうして誰とでも友だちにならないの! 誰とでも友だちになるのは人間関係の基本中の基本でしょ! 基本も分からないんじゃまるでお話にならない!」
裁判官がハンマーをトントンと叩くと回り始める太陽。
圭次は何も言い返せず、少しぐったりし始める。
圭次「うう……気持ち悪い……僕こう見えて人見知りだし……。」
ノーノ「圭次!内容を冷静に考えてみて!」
圭次「そんなの別に基本じゃないよ。別に誰とでも友だちにならなくったって……」
太陽の動きが止まりました。
基本中の基本、常識、当たり前、子供でも分かる…こういう時、大抵言ってる人、高圧的で上から目線てこと多いね。 --------------------------------------------------------------------------
ノーノ「誰とでも友だちにならなくちゃいけないって決めつけられると、そうかなって思っちゃうけど……。」
マリア「私はわりと誰とでも友だちになるけど、でも、それも人によるよね。少数の友だちを大事にしたいという考え方の人もいるし。」
圭次「別に絶対友だちがいなくちゃいけないってわけでもないし。それを『基本中の基本』とか『基本も分からないんじゃお話にならない』とか言われると、自分が全面的に否定されたみたいで、何も言い返せなくなっちゃう……あ、そうか、これ僕の書いた台本だ。相手を押さえつけるのは、リーダーシップでもなんでもない。」
来緋「特に脅し文句で決めつけるんじゃ、全然だめだと思うよ。」
圭次「アジオが嫌なやつになってたってことが、分かったよ。みんなを引っ張って行きながら、でもみんなで考えていかなくちゃいけなかったんだ。」
新井波「いい脚本になるといいね。がんばって。」
圭次「ありがとう。」
新井波「どういたしまして。」
新たな台本で練習を再開した演劇部員たち。
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ヒネ「あれ?タネ、なんで支度しないの?今日は仲間を探しに旅立つ日だよ。」
タネ「気乗りしないんだ。」
アジオ「どうして?」
タネ「やみくもに探し回っても、しょうがないじゃん。」
アジオ「たしかにやみくもに探しても疲れるだけだ。でも、ここにいても始まらない。どうすればいいと思う?」
タネ「なぜぼくらが生き残ったのか。どうしてもそれが気になるんだ。」
アジオ「(しばらく考えて)…僕らが生き残った原因が分かれば、どういうところを探せば生き残っている人間がいるのか、絞り込むことができるかもしれない。でも、ここで考えているだけじゃ、原因を知るにも限度がある。そうだよね?」
うなずくヒネとタネ。
アジオ「じゃあ、ある程度原因を考えたら外に探しに行って、探しながら、また原因を考えよう。どうかな?」
ヒネ「うん。いいと思う。」
タネ「(うなずきながら)それなら……。」
アジオ「なぜ僕たちは生き残ったのか。」
ヒネ「最初は双子ってことが関係するかと思ったんだけど……。」
アジオ「僕は双子じゃない。でも……君たち、年はいくつ?」
ヒネとタネ「16歳。」
アジオ「やっぱり!おんなじだ!」
ヒネ「そうなんだ!うるう年なんだよね」
タネ「しかも2月29日生まれ。誕生日は4年に1回。」
アジオ「えっ、ぼくも2月29日だよ。そうか……。」
アジオとタネ「それかもしれない!」
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マリア「いい感じじゃん!この方がリーダーって感じ!」
圭次「でもさあ……。」
マリア「なに?」
圭次「(笑いながら)マリアの裁判官、こわかったなぁ~!(マリアのまねをして)『基本中の基本でしょ! お話しにならない!』」
マリア「なによ~!!」
ノーノ「でもそんな言葉で偉そうに決めつけるのって、インチキ。本当の説得力じゃないよね。」
溝口先生「そんなニセモノの説得力が世の中にはたくさんある。だから、それに負けないで冷静に考えていかなければ、とんでもないことになってしまうわ。」
圭次「相手の言い方や態度にだまされないで内容を冷静に考える。これって……」
溝口先生「そう。これも、ロンリのち・か・ら☆」

不思議の国のロンリ劇場~不思議の国のジョーシキ~
赤いタルトしか作ってはいけない?
私は青いタルトが好きなの!
女王「赤いタルト以外は作ってはならぬ。それがこの国の常識じゃ!」
アリス「そんなぁ、私はブルーベリーを使った青いタルトが一番好きなのに!」
女王「その者を処刑せよ!」
トントンとハンマーを叩く王様。
王様「女王の言うことに逆らわない。それがこの国ではなによりも基本なんじゃ。」
女王「そんなことも知らぬのか。」
アリス「でも、不思議の国の常識は私たちの世界では非常識よ!」
女王「赤いタルトを作るか!タルトを食べるのをあきらめるかだ!」
うさぎさん「いやいや女王様。自分たちにとって常識でも、他の人たちにとっては常識じゃないこともあるんです。」
アリス「うさぎさんの言うとおりだわ!」
うさぎさん「だからね、ときには自分たちのこれまでの常識を疑ってみることも必要なんですよ!」
アリス「でもうさぎさん、それもやっぱり……。」
うさぎさん「そう、『常識を疑え』、そんなこともちろん、言うまでもなく、常識!……だ。……あれ?」
王様「これにて閉廷!」

論理の力

(16)事実・推測・意見

タネ「ある日、この世界から突然人間がいなくなった。」
ヒネ「だけど、私たちはなぜか生き残った。」
アジオ「生き残った僕たちは3人とも2000年の2月29日生まれ。それが生き残ったことに関係している。」
タネ「だから僕らは探す。誕生日が同じ人間を。」
ヒネ「だから私たちは探す。16歳が行きそうな場所を。」
アジオ「渋谷。」
ヒネ「原宿。」
タネ「新宿。」
アジオ「手分けして探して、あとで原宿で落ち合おう。」
街の一角に集まる3人。
アジオ「どうだった?」
タネ「新宿には誰もいなかった。あのイヤなうるさいカラスはきれいにいなくなっていて、それは逆にいい感じだったけど。でも、ネコはいたんだ。お腹をすかせたかわいいネコが寄ってきたから、食べ物を分けてあげたんだ。」
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溝口先生
論理的に話し合うためにはどうしたら良いか
パンパンっと手を叩くマリア。
マリア「猫にエサ(笑)タネ、いいとこあるんだね!話の流れはこれでいいんじゃない?」
圭次「でしょ。タネの意外な一面も見せられるし、物語も動き出したし。」
溝口先生「それはそうね。だけど、セリフの中に事実考えがゴチャゴチャに入っているわね。冷静に考えを進めたいときには、それは危険だわ。」
圭次「どこがですか…」
溝口先生「どこだと思う?」
マリア「事実と考えが入り混じっている……。あ、ひょっとして、アジオのセリフ「生き残った僕たちは、3人とも2000年の2月29日生まれ。それが生き残ったことに関係している」ってところ?」
来緋「あと、タネが新宿には誰もいなかったって報告するセリフも、少し違和感があった…。」
圭次「うそぉ…」
溝口先生「論理的に話し合うためには、事実を述べているのか、自分の考えを述べているのかをはっきり区別しなければいけない。」
ノーノ「事実か、自分の考えか?」
溝口先生「そう。そして自分の考えには、推測と意見がある。」
ノーノ「事実か、推測か、意見か…。」
溝口先生「もっと詳しく説明しましょう。ついていらっしゃい。」
駅前にダサい店ができた
ずいぶん断定的に言うんだね。
溝口先生は、演劇部の4人をマンガ部に案内しました。
事実、推測、意見』をきちんと区別することは大切です。
例えばこんなシチュエーション……
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来緋「駅前にダサい店ができた。」-
来緋「あれじゃあ、客は入らないね。」
ノーノ「ずいぶん断定的に言うんだね。」
来緋「当然だよ。客観的事実さ。」
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もちろんこれは客観的事実ではありません。
事実というのは客観的で確かなこと。
それに対して、推測はまだ確かではないこと。そして、意見は主観的で個人的なことをいいます。
推測と意見は個人の“考え”ということですね。
先ほどのセリフを『事実、推測、意見』で区別してみましょう。
事実……「駅前に店ができた」
推測……「客が入らない」
意見……「ダサい」
このようになります。
つまり、「駅前にダサい店ができた」というセリフの中には事実と意見が混ざっていたということです。
あなたの成績が悪いのは、演劇なんていう非常識なものに夢中だからよ!
そんなことないよ。
もうひとつ、例えばこんなシチュエーション……
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母「あなたの成績が悪いのは、演劇なんていう非常識なものに夢中だからよ!」
娘「そんなこと…ないよ。」 母「そんなことないことないでしょ!あなたの成績が悪いのは事実じゃない!」
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それでは、セリフを『事実、推測、意見』で区別してみましょう。
事実……「成績が悪い」「演劇に夢中」
推測……「だからよ!」
「成績が悪い」と「演劇に夢中」は事実ですが、その2つのあいだに因果関係があるというのは推測ですね。
意見……「演劇が非常識」
このようになります。
事実は客観的で確かなことです。
一方、“考え”はまだ不確かな推測だったり、人によって意見が違ったりします。
ですから、事実と考えを区別し、さらに何を考えて話し合っていくべきか、ハッキリさせることが必要です。
「2000年の2月29日生まれだから生き残った」 は推測
生き残ったのは、僕たちが2000年2月29日生まれということに関係しているのではないか。これがぼくたちの仮説だ。
それでは、演劇の台本を思い出してみましょう。
「2000年の2月29日生まれだから生き残った」
これは推測です。
「生き残ったのは、僕たちが2000年2月29日生まれということに関係しているのではないか。これがぼくたちの仮説だ。」
このようにすると事実と考えが区別されて良いですね。
「猫がお腹を空かせている」はタネの推測
「かもしれない」という言葉を入れることで推測であることが明確になる
タネのセリフについても考えてみましょう。
「新宿には誰もいなかった。あのイヤなうるさいカラスもきれいにいなくなっていて、それは逆にいい感じだったけど。でも、ネコはいたんだ。お腹をすかせたかわいいネコが寄ってきたから、食べ物を分けてあげた。」
タネが新宿で生存者を見つけられなかったのは事実。
しかし、新宿をぜんぶ調べたわけではないので、誰もいないというのはまだ推測にすぎません。
また、「イヤな」「うるさい」「いい感じ」などは自分の意見ですね。
「新宿では誰も見かけなかった。もう誰もいないのかもしれない。」
このようにすると、事実と推測がはっきりと分かれていて良いですね。
「かもしれない」という言葉を入れることで推測であることがより明確になっています。
もう1か所、直しましょう。
「猫がお腹を空かせている」はタネの推測なのに、事実であるかのように語られています。
「ネコが寄ってきたから、お昼を分けてあげたんだ。かわいかったし、お腹がすいているように見えたんだ。」
などとして、事実と考えの部分を分けると良いですね。
考えを事実のように押し付けてくる人っているよね。
来緋「でも、どうしてカラスはいなくなったのに、ネコは生き残ってるの?変じゃない?」
圭次「変じゃないんだ。実はそれは、この物語を読み解く鍵なんだよ。」
ノーノ「なんか、それ面白い!新たな謎が現れてこれから楽しみ!」
圭次「だけど、事実と推測と意見って、いままであまり区別していなかったかも。」
マリア「自分の考えにすぎないのに、まるで客観的で確かな事実のようにして押しつけてくる人っているよね。」
ノーノ「いるいる!」
溝口先生「事実を述べているふりをして自分の考えを押しつけてきたり、事実の中にさりげなく自分の考えを忍び込ませたりするのは世間の常套手段。だまされてはいけないわ。それを見破るのも、ロンリのち・か・ら☆」
不思議の国のロンリ劇場~事実と根拠~
アリスとうさぎさん
根拠って推測や意見の根っこだったよね。
アリス「ねえウサギさん、なんで自分の考えをまるで事実のように言う人がいるのかしら。」
ウサギさん「そりゃあ、あれだよ。」
アリス「な~に?」
ウサギさん「根拠を言いたくないからだろ。」
アリス「根拠って推測や意見の根っこだったよね。」
ウサギさん「『見せかけの根拠』でやったね。」
アリス「そうだ!なんでそう考えるのか、しっかりとした根拠を言わなくちゃいけないんだった!」
ウサギさん「そういうこと。でも、事実なら、これは事実であーる、でおしまいにできるからね。」
アリス「ずるいわね。」
チェシャ猫が現れました
不思議の国では考えたことが事実になるんだ
突然チェシャ猫が現れました。
チェシャ猫「ずるくなんかないぞ。」
アリス「あ、チェシャ猫。」
チェシャ猫「不思議の国では考えたことが事実になるんだ。だから考えと事実はおんなじなのさ。」
アリス「そんなのデタラメだよ!ありえない!」
ウサギ「あっ!アリス、逃げよう。」
アリス「どうしたの?」
ウサギ「チェシャ猫がぼくたちを頭からがりがりかじるって考えちゃったんだよ。」
アリス「それは事実になっちゃ、いや~!!」

論理の力

(17)問題を整理する

マリアと圭次
次の展開を議論中
圭次が台本を書けなくて困っています。次の展開に悩んでいるようです。
圭次「新しい仲間が登場するのは決まってるんだけど、どうやってその仲間を見つけるか…。」
来緋「ただ歩き回って仲間を探すだけじゃつまんないよ。」
マリア「っていうかさ、私はやっぱりなんで彼らが生き残ったのか、原因が気になる。」
ノーノ「ネコはいたんだから、人間以外にも生き残っている生き物はいるってことだよね?」
来緋「っていうかさ、食糧やばくない?」
圭次「歩き回って探す以外、仲間を探すいい方法あるかな。」
マリア「わたし、おいしいお店は歩き回って探すけどね。」
ノーノ「偶然いい店見つけると嬉しいよね~!」
圭次「だから、台本のこと考えてよ!」
来緋「だからさ、食糧どうなってるの?」
圭次「スーパーに缶詰とかあるんじゃない?」
来緋「缶詰なんて死ぬまでもつわけじゃないし…。」
ノーノ「畑作ろうか!」
マリア「ノーノはさ、なんであの三人が生き残ってたって思うの?」
来緋「っていうかさ、圭次はどうやって仲間を探せばいいと思ってるわけ?」
圭次「だから、それを考えようとしてるんじゃないか!話が全然進まないよ…。」
こういう時の議論、堂々(どうどう)巡り(めぐり)していて、さっぱり前に進みませんね。どうしてでしょうか。
体育館のステージ上に現れた溝口先生
突然、体育館のステージ上に現れた溝口先生。
みんな「溝口先生、何してるんですか?」
溝口先生「それより圭次、台本はできたのかしら?」
圭次「すみません。まだなので、今みんなと議論していたのですが…。」
溝口先生「でも全然話が進まなかった。」
圭次「はい。」
溝口先生「どうしてきちんとした議論にならなかったのか、議論を前に進めるためにはどうしたら良いのかプレイバックして検証してみましょう。」
なぜ議論は前に進まなかったのか?

4人の今までの議論の一部始終はカメラ(音声も付きで)で撮られていました。
自分たちの議論のようすを改めて見た4人。
溝口先生「あなたたち、一度にいくつの問題を考えようとしていたと思う?」
圭次「僕としては台本のことだけ。つまり、1つなのですが。」
溝口先生「1つの問題に見えても、そこに複数の問題が含まれていることがあるの。それをきちんと区別しないで一度に話し合おうとしてもうまくはいかないわ。」
ノーノ「どうすればいいの?」
溝口先生「問題を分けて整理すること、そして順番に考えていくことが大事。さっき一度に考えようとしていたことは、いくつかの問題に分けられるはず。」
マリア「私は、生き残った原因を問題にしたね。」
来緋「僕は、食糧のことを問題にした。」
圭次「僕が問題にしたかったのは、仲間を探す方法。」
ノーノ「そっか。3つの問題をいっぺんに話してたんだ。」
解決すべき問題を、分けて一つずつ解決していけばいいのです。

ノーノ
マリア「じゃあ、それぞれ一つずつ片付けていこう。まずは仲間を探す方法、この問題に集中しよう!」
圭次「来緋が言うようにただ歩いていて偶然出会うんじゃ、ストーリーとして弱い気がする。」
ノーノ「メッセージをくくりつけた風船を飛ばしてみるとか。」
圭次「ロマンチックだけど…。」
マリア「でも、こっちからメッセージを発信した方がいいよね。向こうもきっと誰か探しているはずだから。」
ノーノ「でも、もう携帯電話も使えないんでしょ?」
圭次「電気が通じてないから。」
来緋「…そうだ。旗をあげるのは?こっちが生き残ってるぞって知らせるために“生きてるぞ”って書いた旗。」
圭次「来緋にしては熱いかんじでなんかいいね!」
マリア「今までと発想が切り替わったかんじがしていい!」
圭次「よしっ。問題1つ解決。」
旗をあげるのはいいアイデア。でも周りに建物があったりすると遠くまで届かない。狼煙(のろし)なんていうのも昔使われたよ。煙の方が高くまで上がるし遠くまで届く。花火でもいい。サイレンを鳴らす。音を利用するんだね。君たちも色々考えてごらん。でも、この場面で利用できるものはかなり制約があるね。
ノーノ「前進したね!」
マリア「この調子で残りの問題もひとつずつ考えて、良い台本にしよう!」
誰も見つからず疲れた様子の3人
旗をかかげてみる
書きあがった台本で練習を始めた演劇部。
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タネ「これ以上探しても無駄だよ。やっぱり誰もいないよ。」
アジオ「もっと探せばきっと生存者は見つかるよ。」
ヒネ「なんで私たちが生き残ったのか、原因を考えようよ。」
タネ「食糧はどうするのさ?」
アジオ「缶詰があるだろ。」
タネ「死ぬまでもつってわけじゃないし…。」
ヒネ「アイス食べたい…。」
ほらほら、また堂々(どうどう)巡りになってきた。問題を一つに絞(しぼ)らないとね。
アジオ「ちょっと待ってよ!今考えなくちゃいけない問題はいくつもある。でも、次に何をしなくちゃいけないか問題を整理して考えようよ。」
ヒネ「わかった。アイス撤回。」
タネ「食糧はだいじな問題だよ。」
ヒネ「生き残った原因も。」
アジオ「それから、仲間をどうやって探すか。」
ヒネ「問題は3つ。」
アジオ「今考えなくちゃいけないのは仲間を探す方法だと思う。食糧はまだしばらくは大丈夫。生き残った原因は僕だって知りたい。でも、僕たちと違って1人ぼっちで生きる希望を失っている仲間がいるかもしれない。」
ヒネ「1人かぁ。孤独……つらいだろうなぁ。」
タネ「旗…。」
ヒネ「旗?」
タネ「うん。向こうだって誰かを探してる。だから旗をあげて、僕らが生きてるってことを示すんだ。」
ヒネ「いいかも!」
アジオ「さっそくやろう!」
旗をかかげた後、人の足音が近づいてきました。
ヒネ「あっ……誰か生きてる!」
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まず、一つずつ、実行してから、次の問題を考えるんだ。
いいかんじにできた
来緋
マリア「いいかんじ!問題を整理するっていうのも、さっそく取り入れたんだね!」
圭次「うん。」
ノーノ「混乱から立ち直った!みたいなかんじ。」
来緋「でも、演劇部の話し合いもよくゴチャゴチャになってるよね。」
マリア「そうそう。いっぺんにいろんなこと問題にして、何が問題なのかわからなくなってるよね。」
圭次
溝口先生
圭次「問題を整理して1つずつ議論する。そうやって考えていかないと、なかなか前に進めない。もしかして、これも…?」
溝口先生「そう。それも、ロンリのち・か・ら☆」
不思議の国のロンリ劇場~不思議の国の問題~
アリスとウサギさん
人生の問題は問題そのものがハッキリしていない
ウサギさん「お~い、アリスちゃ~ん。お~い!…あっ。こんなところにいた。どうしたんだい?」
アリス「私、いったいどうしたら幸せになれるのかしら?」
ウサギさん「それは何を幸せと考えるかによるね。」
アリス「どういうこと?」
ウサギさん「『どうすれば幸せになれるか』を考える前に『幸せとは何か?』を考えるべきだね。」
アリス「ウサギさん、それ難しい問題ね。」 ウサギさん「そうだね。人生の問題はテストとは違う。テストは何が問題なのかハッキリしているけど、人生の問題は問題そのものがハッキリしていないから、まず何が問題なのかを考えなくてはいけないんだ。」
不思議の国は存在自体がおかしい?
問題ないと言い張る仲間たち
アリス「不思議の国なんてさ、存在自体が絶対おかしいんだけど、何が問題なのかがハッキリしないよね。」
帽子屋「不思議の国に問題なんかないぞ!」
ハンプティダンプティ「問題なんかない!」
ティードルディ「ないったらない!」
ティードルダム「これでいいー!」
チェシャ猫「これでいいんだ!」
女王「問題なんて絶対ない!」
アリス「そんなぁ…問題あると思うんだけどなぁ!」

論理の力

(18)横ならび論法

南淳と友人2人が立ち話をしています
壁に隠れてコソコソ話しをしている圭次と来緋(らいひ)
廊下で南淳(みなみ じゅん)と友人2人が立ち話をしています。
壁に隠れてコソコソ話しをしている圭次と来緋。
圭次「かわいいでしょ?南淳。新キャラのレビ役にぴったりじゃない?」
来緋「うん。いいと思うよ。でも声をかけるなんて…。」
圭次「演劇部はいままで一年生がスカウト役をしてきたんだ。だからここは来緋がいかなくちゃ!」
来緋「えー!」
ノーノ「なにやってんの?」
圭次と来緋「うわっ!」
壁から転げ出た圭次と来緋に南淳が気付きます。
ノーノ「あ、淳ちゃん!」
南淳「野乃ちゃん、久しぶり~!」
圭次「知り合いなの…?」
ノーノ「いとこの南淳ちゃんだよ。」
圭次「確かにノーノと同じ名字だね…。」
演劇部が体育館で練習をしています。
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タネ「この世界から誰もいなくなったと思っていた。しかし、ヒネと、アジオは生き残っていた。僕は一人ぼっちじゃないという安堵感と同時に、人間関係のストレスを感じ始めていた。そこへまた新しいメンバーが加わることになった…。」
レビ「あなたたちのなかで誰がリーダーなの?」
タネ「リーダーなんていないよ。」
レビ「そんなのおかしい。」
アジオ「僕がリーダーになる。いいだろ? いままでもこのグループをリードしてきたのは僕だったからね。」
ヒネ「リーダーはいらないと思う。」
アジオ「どうして?どんなグループにだってリーダーはいるだろ!」
レビ「私たちのグループのリーダーは私よ。」
アジオ「そう。誰かがリーダーになるべきだ。」
タネ「いなくていいよ、リーダーなんて!」
--------------------------------------------------------------------------
パンパンと手を叩くマリア。
マリア「ここのところさ、もっとちゃんとアジオに反論しようよ!」
圭次「だからヒネとタネが反対してるじゃん。」
マリア「反対じゃない。は・ん・ろ・ん。」
ノーノ「私もここでアジオに言い負かされるの、なんかいやだな。」
圭次「でも、反論って、どうすればいいの?」
マリア「だからぁ…、それを考えようってわけよ。」
溝口先生「『横ならび論法』ね。」
ノーノ「よこならびろんぽー?」
溝口先生「そう。『いままで論法』も含まれていたわ。」
ノーノ「え?え?いままでろんぽー、ですか?」
溝口先生「そう。そんなインチキ論法に対抗するには、こんな感じ。」
インチキ論法て言うけど、別にインチキなんかじゃないよ。君たちの周りでも大人たちが結構使っているだろう。みんなが認めている場合は、「暗黙のルール」と言って従わないと、みんなから嫌われることもあるんだよ。例えば、「演劇部はいままで一年生がスカウト役をする。」ということが、部員全体の了解事項となっている場合など。」
「みんなメガネをかけている。だから君もメガネをかけるべきだ」
“みんながそうしているから、あなたもそうしなければいけない”という論法のことを横ならび論法という
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あなた以外のクラスの全員がメガネをかけていたとします。
そのとき「みんなメガネをかけている。だから君もメガネをかけるべきだ」と言われたら、どう思いますか?
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このように“みんながそうしているから、あなたもそうしなければいけない”という論法のことを横ならび論法といいます。
しかし、みんなに当てはまる理由が自分には当てはまらない場合もあります。
そのときには、みんなと同じにする必要はないですね。
この場合には、みんなは目が悪いからメガネをかけているけど、自分は目が悪くないからメガネは必要ない、といえます。
“みんなが行くから”というのは”あなたも行かなければいけない”ということの理由にはなりません。
『すべての鳥は飛べる。』と言っても、ペンギンやダチョウは飛べません。だから、この横ならび論法を撃破(打ち破ること)するには、前提となる『すべての』を疑うことから始まります。みんながそうしている理由をはっきりさせないといけません。 話し合う圭司、来緋、溝口先生
それでは次のシチュエーション。
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みんな塾に通っている。だからあなたも塾に通わなければならない。
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こういう言い方をされると、説得されそうになりませんか?
しかし、“みんなが行くから”というのは”あなたも行かなければいけない”ということの理由にはなりません。
なぜみんなが塾に行くのか、その理由を考えて、それが自分にも当てはまるかどうかを考えなくてはいけないのです。
「塾に行ってる子は勉強が出来ない。私は勉強ができる。だから塾にはいかない。」など。
当てはまるなら自分も行けばよいし、当てはまらないなら行かなければよいですね。
同じような論法にいままで論法があります。
“今までそうだったから、これからもそうしなくちゃいけない”という論法です。
例えば、かつての日本では女性は政治に参加することができませんでした。
その時代にこんなふうに言われたとしたらどうでしょう…
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「今まで女性は政治に参加できなかった。だからこれからも女性は政治に参加すべきではない」
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このような理屈を認めたら、これまでの間違いを直すことができなくなります。
今までそうだったということが事実だったとしても、これからもそうすべきかどうかはきちんと考えなければいけないのです。
今まで論法の例。
理由をきちんと考えることが大事。
ここで冒頭の圭次と来緋の会話を思い出しましょう。。
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来緋「声をかけるなんて…。」。
圭次「演劇部は今まで一年生がスカウト役をしてきたんだ。だからここは来緋がいかなくちゃ。」。
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ノーノ「そんなことしてたんだ~!」。
圭次「いや、だって僕も先輩にさせられてたからさ。」。
マリア「でも、部員をスカウトするなら、経験を積んだ上級生の方がよくない?」。
同じ部員でも反対に意見がありますね。これは『暗黙のルール』になってなかったのですね。。
来緋「今までがそうだったからって、単純にこれからもそうしなくちゃいけないっていうのは…。」。
ノーノ「『今まで論法』ですねぇ。」。
来緋「じゃあ、『みんながそうしてるんだから』とか『今までそうしてきたんだから』って言われたら、どうすればいいの?」。
溝口先生「その答えはここまでの話しで示されていたわ。」。
マリア「女性の参政権の例だったら、今までがまちがっていたって反論することになる。」。
圭次「塾の例だったら、みんなが塾に行く理由が自分には当てはまらないって言えばいい。」。
このように、基本的な反論パターンは次の2つです。 (1)『みんなが間違っている』『今までが間違っていた』というパターン
(2)『みんなに当てはまる理由が自分には当てはまらない』『今まで成り立っていた理由がこれからは成り立たない』というパターン
溝口先生 「反論することも大事だけれど、本当にだいじなのは、『みんなが』とか『今までは』ということで済ませないで、ちゃんと理由を考えること。その上で、賛成する場合ももちろんあるわ。」
『横並び論法』や『今まで論法』は、使う側にもそれなりの理由があるはずですね。でも、その理由があなたたちに不都合なことがある訳(わけ)です。
横ならび論法や今まで論法に注意して台本を書き直した圭次。
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レビ「あなたたちの中で誰がリーダーなの?」
タネ「リーダーなんていないよ。」
レビ「そんなのおかしい。」
アジオ「僕がリーダーになる。いいだろ? 今までこのチームをリードしてきたのは僕だったからね。」
ヒネ「リーダーはいらないと思う。」
アジオ「どうして?どんなグループにだってリーダーはいるだろ!」
レビ「私たちのグループのリーダーは私よ。」
タネ「リーダーがいないグループだってあるよ。」
ヒネ「それに、仮に他のグループすべてにリーダーがいたとしても、私たちのこのグループに今リーダーが必要かどうかは別問題だと思う。私たちがどうするかは、私たちで話し合わなくちゃ。」
アジオ「だけど、今までだって僕がリーダーシップをとってきたつもりだけど?」
タネ「今までは今までだよ。問題はこれからどうするかだ。」
ヒネ「これまでのことは感謝してるよ。アジオがリードしてくれて助かったと思う。だけど、仲間は増えるし、状況も変わる。単純に今までどおりにすべきってことにはならないと思う。」
アジオ「分かったよ…。」
軽くにらみあうアジオとタネ。
レビ「あれ?もしかしてあなたたち、仲悪い?」
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パンパンと手を叩くマリア
溝口先生
パンパンと手を叩くマリア。
マリア「ヒネ、かっこよかったね。単に反対するんじゃなくて、ちゃんと反論してたものね!」
ノーノ「『横ならび論法』と『いままで論法』。どっちも世の中に溢れているよね。」
圭次「自分でも、『みんながそうだから自分もそうしなくちゃ』とか、思っちゃう。」
ノーノ「『横ならび論法』や『今まで論法』って、相手に考えさせない論法だって感じがする。気をつけなきゃ。」
来緋「流されちゃう、っていう感じ?」
>余計なことを考えなくてもいいようにするのが『暗黙のルール』。だから、それをまねした『横ならび論法』や『今まで論法』は、すごく騙(だま)されやすい。だから、これって本当にルールなの、従わないとおかしいのと疑問を持つことが解決の第一歩ですね。
溝口先生「『みんなが』とか『今までは』ということに流されずにきちんと考える。これも論理のち・か・ら☆」
不思議の国のロンリ劇場~アマノジャク論法~☆
おやすみなさい
かくなる上は、さようなら!
アリス「おはよう!」
チェシャ猫「おやすみなさい。」
アリス「おはよう!」
ドードー鳥「かくなる上は、さようなら!」
みんな、普通におはようって返してくれない
『みんながしていることはしてはいけない』って、その決まりにはみんなが従っている
アリス「おはよう!」
帽子屋「(ティーポットを差し出して)おかわりいかが!」
アリス「って!どうしてみんな、普通におはようって返してくれないのかなぁ!もう!」
帽子屋「不思議の国では、みんながしていることは、してはいけないのさ」
アリス「えーっ、変なの!」
うさぎさん「みんながしているから自分もしなくちゃって思うのは、『横ならび論法』。ロンリのちからで習っただろ?」
ヤマネ「『横ならび論法』。ダサいね。」
アリス「でも、それって逆に、単なるアマノジャクってだけじゃない。ちゃんと考えないという点では、『横ならび論法』と同じだわ。」
三月ウサギ「え? そ、そうかな。」
うさぎさん「そうかも…。」
アリス「それに、『みんながしていることはしてはいけない』って、その決まりにはみんなが従っているの?」
アリス以外の一同「えーっ???」

論理の力

(19)ずれた反論

できあがった台本を圭次がみんなに手渡しています。
圭次「いよいよその日が訪れる。」
マリア「クライマックス目前だね!」
ノーノ「みんながどうなっちゃうのか、ドキドキする!」
来緋「早くやってみようよ。」
圭次「お、来緋くん、やる気だねぇ!」
演劇部が体育館で練習をしています。
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タネ「2017年2月28日、事件は起こった。」
アジオ「街から緑が消えていた。」
レビ「もう植物は育たないってこと?」
ヒネ「それ、やばくない?」
アジオ「僕たちで畑を作って、試してみようよ。」
タネ「違う……。そうじゃない。」
ヒネ「どういうこと?」
タネ「どうしてみんながいなくなったのか、早く原因を探らなきゃいけない。だから畑を作っている場合じゃない。」
ヒネ「またそうやって反対する。去年の家族旅行だって、タネが反対したからけっきょく行けなかったんじゃない!」
タネ「でも……。」
レビ「食糧はどうするつもりなの?」
タネ「まだしばらくは保存食がある。だからまだ畑を作らなくてもいい。」
アジオ「反対してたって前には進めないよ。いくらタネが反対しても、僕たちは作物が育つかどうか試してみるから。」
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議論が噛み合ってない
溝口先生
パンパンと手を叩くマリア。
マリア「タネを孤立させたいのは分かるんだけど、これはちょっと……。ちゃんと議論が噛み合ってない、というか…。」
圭次「なんで?どのあたり?」
マリア「どの辺りって言われると~…。」
溝口先生「論点がずれた反論をしてしまってるわね。」
一同「溝口先生!」
溝口先生「どこがどうずれてるか、考えてみましょう。」
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ハムレットに扮した溝口先生。
ハムレット(溝口先生)「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。」
飛んできたドクロを避け、マントをひるがえすといつもの溝口先生に戻りました。
溝口先生「いや、なによりもまずロンリのちからを身につけるべきだ。」
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『ハムレット』って、ご存知ですか。イギリスの有名な作家シェークスピアが書いた劇です。
圭次「溝口先生、なにハムレットやってるんですか!」
溝口先生「一度やってみたかったのよ。」
マリア「ここは影絵クラブ?」
溝口先生「そう。論点のずれた反論に光を当てて、誤りを浮かび上がらせてみましょう。」
剣の練習をするハムレット
今日も練習をすべきか、今日は休むべきか…
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剣の練習の途中で、椅子に座り込むハムレット。
従臣「ハムレット様、どうなさいました?」
ハムレット「すこし、熱がある。」
従臣「それはいけません。」
ハムレット「今日も練習をすべきか、今日は休むべきか…。」
従臣「それで、どうするおつもりで?」
ハムレット「今日は休もうかと思う。」
従臣「なにをおっしゃる!練習は大事です。どんな天才剣士だって、練習なくして強くなれはしないのです!さあ、お立ちなさい!」
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この会話は論点がズレています。
“練習が大事”だということはハムレットもわかっているはずです。
その上で“少し熱があるから1日だけ休もうかな”と言っているのですから、
返答として“天才剣士でも練習しなくちゃ強くなれない”はズレているのです。
塾に行くべきか、行かざるべきか…
君だってこの前、ヴァイオリンの稽古を休んだじゃないか!
次のシチュエーションです。
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ハムレット「僕は今日、塾に行くべきか、行かざるべきか…部活で疲れたし、やっぱり、塾には行かない!」
オフィーリア「ハムレット様、あなたは間違っています。もうすぐ模擬試験なのですから、塾に行って準備をなさらなくては!」
ハムレット「いやいやオフィーリア、君だってこの前、ヴァイオリンの稽古を休んだじゃないか!」
オフィーリア「そんなぁ…。」
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自分が塾を休むことをとがめられると、相手が前にヴァイオリンの稽古を休んだことを持ち出しています。
しかし、この2つにはまったく関係がありませんね。
論点がズレています。
ここで圭次の台本を思い出しましょう。
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タネ「どうしてみんないなくなったのか、早く原因を探らなきゃいけない。だから、畑を作っている場合じゃない。」
ヒネ「またそうやって反対する。去年の家族旅行だって、タネが反対したからけっきょく行けなかったんじゃない!」
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マリア「いまは作物を育ててみるべきかどうかが問題なのに、去年の家族旅行のことを持ち出されてもねぇ。」
圭次「そうだよね。それに、台本でおかしいの、ここだけじゃないよ。」
食糧はどうするつもりなの?
反対してたって前には進めないよ
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レビ「食糧はどうするつもりなの?」
タネ「まだしばらくは保存食がある。だからまだ畑を作らなくていい。」
アジオ「反対してたって前には進めないよ。いくらタネが反対しても、僕たちは作物が育つかどうか試してみるからね。」
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圭次「反対する人に“反対ばかりしても前進しない”って言うのは、論点がずれてるっていうか、論点を無視してるっていうか…。」
来緋「アジオたちだってタネに反対してるのに、タネだけが反対しちゃだめって、ありえない。」
マリア「なるほど~。やっぱり、なんか噛み合ってないと思ったんだよ。」
溝口先生「でも自分たちでちゃんと気づいたのは偉いわ。」
圭次「へへへ、褒められちゃった。」
溝口先生「では、台本を直してみなさい。」
みんな、僕のことなんてどうでもいいんだ
論点に注意して台本を書き直した圭次。
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アジオ「街から緑が消えていた。」
レビ「もう植物は育たないってこと?」
ヒネ「それ、やばくない?」
アジオ「僕たちで畑を作って、試してみようよ。」
タネ「違う……。そうじゃない。」
ヒネ「どういうこと?」
タネ「どうしてみんながいなくなったのか、早く原因を探らなきゃいけない。だから、畑を作っている場合じゃない。」
ヒネ「またそうやって反対する。去年の家族旅行だって、タネが反対したからけっきょく行けなかったんじゃない!」
タネ「あのときは悪かったよ。だけど、それといまは別の問題だ。いまは僕のわがままで反対しているわけじゃない。」
レビ「食糧はどうするつもりなの?」
タネ「まだしばらくは保存食がある。いま畑を作らなくてもいい。」
アジオ「それは見通しが甘いよ。僕たちはみんな一から畑作りを勉強しなくちゃいけない。今日タネをまいて明日食べられるようになるわけじゃない。今すぐに始めなきゃ。」
ヒネ「一緒にやろうよ。」
タネ「……。」
レビ「タネや肥料は店にあるはずよ。」
ヒネ「それに本当に緑がなくなったのか、もっと調べてみなくちゃ。」
アジオ「さあ、出かけよう。」
ひとり残されたタネ。そこに猫の声が聞こえてきました。
タネ「確かに仲間が増えた。だけど僕の友だちはこいつだけだ…。みんな、僕のことなんてどうでもいいんだ…。それなら…みんな…いっそのこと…いっそのこと……」
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パンパンと手を叩くマリア。
マリア「論点のずれた反論から一転、ちゃんとした議論になってたね!」
来緋「タネはみんなからどんどんズレちゃってるけどね。」
圭次「そのズレが最後に大きな感動を生むんだよ。」
ノーノ「本当に~?この流れで感動させられるの~?でも圭次が貸してくれる漫画は暗いのばっかりだから、疑わしいもんだ!」
来緋「あ、論点のずれた反論。」
ノーノ「しまった!気をつけないと、論点のずれた反論って普通にやっちゃう!」
圭次「難しいよね。相手がずれた反論を言ってきたら、きちんと“論点がズレてる”って指摘できなくちゃダメだし。」
マリア「自分でもズレないようにしなくちゃいけないしね。溝口先生、これってやっぱり…」
溝口先生「そう。これも論理のち・か・ら☆」
要するに相手方に発する質問に全く答えておらず、全く関係の無い答えを持ち出して話をずらしてしまうこと。わざとこれをやる人も多いので気を付けないといけない。
不思議の国のロンリ劇場~ずれた応答~
論点がずれてるうさぎさん
アリス「ねえねえ、うさぎさん。論点がずれるのって、反論のときだけじゃないよね。」
うさぎさん「どういうこと?」
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アリス「ねぇねぇ、ニセウミガメさん。あなたの名前には“ニセ”ってついてるからニセモノだってこと?だましてるってこと?」
ニセウミガメ「何を言うんだい。ニセウミガメのスープは、とっても、ほんとにとっても、おいしいんだよ!」
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アリス「こんな風に質問に答えるときにも、論点がずれた答えが返ってくることってあるよね。」
うさぎさん「たしかに。ときにはわざと論点をずらした答えを返す人もいるからね、たちが悪いよね。」
アリス「どうしてわざと論点をずらして答えたりするの?」
うさぎさん「実際、答えになってない答えを返す人も、多いよね~。」
アリス「それ、私の質問への答えになってないわ!」
うさぎさん「ぎくっ。」
アリス「私はどうしてわざと答えになってない答えを返す人がいるの?って聞いてるのよ。ねえ、どうして?」
うさぎさん「で、でも、ポイントのずれた質問をする人だっているし…。」
アリス「あ、また論点がずれてる!うさぎさん、わざとずらしてるでしょ!」
うさぎさん「え、いや、だから、その、つまりだね…。」

論理の力

(20)異なる意見を尊重する

体育館で練習をしている演劇部。
タネ「みんな、僕のことなんてどうでもいいんだ…それなら…いっそのこと…いっそのこと…いなくなればいい。」
タネ「こうしてこの世界は再び、僕一人になった。」
タネ「意見が合わないんだからしょうがないよ。意見が違う人とは一緒にやっていけないんだから!」(なんだいたのか)
ヒネ「わたしたちは双子。だけど考え方は違う。それでもずっと一緒にやってきた。」
タネ「違うんだから、意見が!」
アジオ「君が僕を求めたんだ。友だちがほしいって。」 
タネ「でも、ぶつかってばかりだったじゃないか。」 レビ「それで私たちを求めた。一人では生きていけないタネ。なのに誰とも一緒に生きていけない。」
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今後のストーリーに悩む演劇部
パンパンと手を叩く圭次。
圭次「って、ここまでは書けたんだけどさ、この後をどうしたらいいか…。」
マリア「ここからが一番大事な最後の場面でしょ?」
圭次「タネが一人になったのは、他人を拒絶したからなんだ。」
ノーノ「この世界はタネの気持ちで作られてたんだね。
圭次「うん。だから、タネが受け入れようとしたものだけが残った。」
来緋「カラスは拒否したからいなくなった。でも猫は受け入れたから残った。」
圭次「だから、この劇のラストは…」
マリア「タネが他人を受け入れて、世界が復活する。」
圭次「でも、どうやって他人を受け入れる方向にもっていくか…。」
溝口先生「難しいわね。」
みんな「溝口先生!」
溝口先生「ついていらっしゃい。」
コンテンポラリーダンスと現代音楽の合同クラブ
なくなっていく部活もある
先生は演劇部のみんなをコンテンポラリーダンスと現代音楽の合同クラブに連れて行きました。
溝口先生「ここはコンテンポラリーダンスと現代音楽の合同クラブよ。お互い部員不足で廃部(はいぶ)になりそうだったから合併したの。この学校の部活やクラブは自由にいくらでも作られているように見えるけど、その一方でなくなっていくものもあるのよ。」
廃部になる原因はいろいろあります。活動内容が高校生として不適切。例えば、ギャンブル部とか、婚活部なんて絶対ダメ。また、活動に予算がかかりすぎる。活動の場所が無くなった。部員が減ってしまった。一人とか二人では部と言えないですよね。その他色々ありますね。どうして部をなくしたいかその理由を聞かないと納得(なっとく)できませんよね。
マリア「私たち演劇部は大丈夫だよね…?」

ノーノ「え、私たちも人数少ないし…もしかして…。」
溝口先生「残念ながら職員会議でこんな議論があったの。」
下の議論では、今まで学んだ見せかけの論理が沢山(たくさn)出て来ますよ。 ----------------------------------------------------------------------------------------------
男性の先生「演劇部はなくすべきですね」
溝口先生「演劇部をなくすなんて、どういうつもりですか!」
男性の先生「どういうつもりですかって、そんなことも分からないんじゃ、話にならないな。あんな演劇部、なくすのが当然でしょう。」
(言い方が上から目線で、初めからけんかを吹っかけてますよ。うっかり反対すると水掛け論になりそうです。)
溝口先生「どんな高校にも演劇部はあります。我が校の演劇部をなくすわけにはいきません!」
男性の先生「1+1=2も分からない子どもみたいなことを言うもんじゃありませんよ。困った先生だ!」
溝口先生「分からないのはそちらでしょう。演劇部は生徒たちに必要なクラブなんです!」
男性の先生「やれやれ。だいたいあなたはわがままなことを言い過ぎだ。去年の学園祭のときも、期間を四日間にすべきだとか、ずいぶん無理なことをおっしゃっていた。」
溝口先生「わがままとはなんですか!私がわがままなら、あなたは分からず屋です!」
マリア「なんかこれって、ダメな議論の見本市みたいになってない?」
圭次「水掛け論だよね。」
ノーノ「“そんなことも分からないのか”とか、“子どもみたいなことを言う”とか、上から目線で押さえつけようとしてる。」
圭次「説得力があるようで、実はない。ニセモノの説得力だ。」
マリア「“去年の文化祭のときもあなたはずいぶん無理なことを言った”って、ずれた反論だよね。」
圭次「演劇部の話をしているのに、去年の文化祭のことを持ち出すなんて、論点がずれてるね。」
来緋「“どんな高校にも演劇部はあります。我が校の演劇部をなくすわけにはいきません!”って…。」
マリア「あ、これって!」
来緋「横並び論法!他の高校に演劇部があるからって、うちの高校になければいけないってことはない。」
溝口先生「私もつい感情的になってしまったの。」
圭次「先生は僕らの味方だよね。僕らもロンリのちからを身につけてきたわけだし、直談判して戦おうよ!」
溝口先生「頼もしいわね。だけど、ロンリのちからが本当に力を発揮するのは、戦いの場面ではないの。」
来緋「どういうこと?」
溝口先生「いままでいろいろなロンリのちからをあなたたちに教えてきた。だけど、それを支えているのはただ一つのこと。自分と違う意見を尊重するという姿勢。」
来緋「無理!演劇部をつぶせなんて意見、尊重できるわけないよ!」
溝口先生「異なる意見を尊重するということは、けっして相手の言いなりになるということではないわ。」
マリア「じゃあ、私は私、あなたはあなたで、お互いに干渉しあわないようにする…ってこと?」
溝口先生「それも、異なる意見を尊重するということではないわ。」
圭次「干渉しあわないのだと、むしろ無視してるって感じ。」
ノーノ「じゃあ、自分と違う意見を尊重するって…?」
溝口先生「相手を理解しようとすること。どうしてそう考えるのか、その理由も理解する。そしてその上で、異なる意見から学ぼうとする姿勢をもつこと。」
ノーノ「私たち、ちょっと体育館を使いすぎかもね…。」
圭次「部員を増やす努力もしなくちゃいけないし…。」
マリア「どうして演劇部をなくそうと考えているのか、その理由がわかれば、演劇部をもっといい部にできるんじゃないかな…。」
来緋「(珍しく大声で)そうか!」
ノーノ「うわ、びっくりした!」
来緋「劇の台本だよ!タネは意見が違う人たちとは一緒にやっていけないって考えて、他人を拒否した。だけど、大事なのは異なる意見を尊重するっていうことなんだ。それは、みんなが同じ意見になるっていうこととは違う。」
マリア「それだよ!来緋!」
圭次「なんか最後のシーンが見えてきた…。」
できあがった台本で演劇部がリハーサルを始めました。
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タネ「みんな、僕のことなんてどうでもいいんだ…それなら…みんな…いっそのこと…いっそのこと…いなくなればいい。」
タネ「2月29日生まれの僕たちが、17歳になって迎えた朝、誰もここには戻らなかった。こうしてこの世界は再び、僕一人になった。」
タネ「意見が合わないんだからしょうがないよ。意見が違う人とは一緒にやっていけないんだから!」
ヒネ「わたしたちは双子。だけど考え方は違う。それでもずっと一緒にやってきた。」
タネ「違うんだから!意見が!」
アジオ「君が僕を求めたんだ。友だちがほしいって。」
タネ「でも、ぶつかってばかりだったじゃないか。」
レビ「それで私たちを求めた。」
タネ「この世界の誰とも意見なんて合わないんだ!」
ヒネ「だから、いいんじゃない。」
タネ「え?」
ヒネ「タネだって、違う考えの人たちと出会うことで、成長してきたんだよ。」
タネ「僕はみんなに拒否された。だから、僕もみんなを拒否したんだ。」
アジオ「違うよ。全然違う。意見が違っても自分が拒否されているわけじゃない。確かに僕と君はよく意見が対立した。でも、僕は君のことを嫌いだなんて思ったことはない。」
タネ「そうなの?」
アジオ「僕もさ、人の意見を聞かないところがある。でも、それじゃダメなんだね。自分の考えに凝り固まっちゃったら、成長しないし、新しいものも生まれてこない。」
レビ「タネ、自分と違う意見をこわがらないで!」
タネ「僕は臆病(おくびょう)だった。この世界に居場所(いばしょ)を求めて一人になろうとした。でも、そうすることでかえって僕は居場所を失った。僕はいまでも臆病だ。だけど、僕が僕自身であるためには、僕は僕自身を越えなくてはいけない。」
世界に都会の喧騒が戻る。
完成!
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マリア「『16歳の国』とうとう完成したね!」
圭次「完成した!」一同喜ぶ。
ノーノ「この劇(げき)が評判になれば、演劇部の存在をアピールできる!」
圭次「ここから意見を出し合って、学園祭までにもっといい作品に仕上げていこう!」
来緋「タネを演じることで、ぼくもちょっと成長したかも。自分と違う意見を尊重するって、難しいけど、大事だね。」
マリア「なぜ自分とは違う考え方をするのか、その理由をきちんと理解して、自分とは違う意見から学ぼうとする。もしかして、これも?」
溝口先生「そう。これも論理のち・か・ら☆
以上で、NHKの番組は1学期は終了です。2学期からどうするのか、未だプログラムは出来ていません。取りあえずいったん終了です。また続きがあるかも知れませんが。
不思議の国のロンリ劇場~異なる意見を尊重する~
不思議の国の人たちの意見って、私には理解できない
アリスに頬にキスをされ、のぼせるうさぎさん
アリス「うさぎさん、不思議の国の人たちの意見って、私には理解できない。」
うさぎさん「自分と異なる意見はすぐに理解できないことも多いよ。大事なのは理解しようとする姿勢を持ち続けること。すぐに理解できなくても、諦めちゃだめさ。」
アリス「諦めちゃだめ。分かったわ。でもね…。」
うさぎさん「なんだい?」
アリス「不思議の国の人たちって、お互いを理解しようとすることを諦めてない?
うさぎさん「えっ?!」
アリス「異なる意見から学ぶことを、諦めちゃってない?」
うさぎさん「そ、そうかな…。」
アリス「だったらやっぱり私、この国にはいつまでもいられない。お互いに理解して学びあおうとする国に戻らなくちゃ。」
うさぎさん「アリス…。」
アリス「ウサギさん!ありがとう。」
アリスにキスをされ、のぼせるうさぎさん。そして、足早にトンネルの闇に消えてゆくアリス。
部屋の椅子の上でキティー(猫)と遊ぶアリス。
アリス「夢だったのかしら。そうね、私は夢からも学べるけど、夢は私から学べない。でも、あんな夢なら、また見たいな。」

論理の力

論理パズル

第1問-帽子の色1 第2問-額のシール 第3問-帽子の色2 第4問-虫食い算 第5問-消えた1000円

第1問-帽子の色1

自分の色

赤い帽子(ぼうし)が2つ、白い帽子が3つあります。このことはA、B、Cの3人には教えておきます。A、B、Cの3人が縦(たて)一列に並び、それぞれがどれかの帽子を被(かぶ)せられます。もちろん自分の帽子の色は分からないけど、前に座っている人の帽子は見えます。後ろの人の帽子は見てはだめだね。さて、試験官が、初めにCに自分の帽子の色が分かるかどうか尋ねます。Cは、即座(そくざ)に「分かりません。」と答えました。試験官は、同じ質問をB、Aの順に尋ねました。2人はしばらく考えてから「分かりません。」と言いました。試験官は、「そうかな。でも3人の中に自分の帽子の色が分かる人が必ずいるはずだがね。」と言いました。

自分の色 【解説】
まず問題とその絵を見て状況を整理してみましょう。どこにポイントがあるのか分からないと手も足も出ないからね。まず、3人は1列に並んでいる。ルールでは決して後ろを見てはいけないんだね。ゲームは、自分の帽子の色を当てること。だから、このゲームでは後ろに座った人の方が有利だね。その代わり質問は後ろの人からする。前の人は後ろの人の答えから新しい情報を得る。だから後ろの人が間違った答えをすると、ゲームは成り立たない。 まず、試験官がCに質問する。Cは前に2人の頭が見えるので、A、Bの2人が赤い帽子を被(かぶ)っていたら、もう赤い帽子は残っていないので、自分の帽子は白だと断定できますね。つまり、実際はAとBのどちらかが、あるいは両方が白い帽子を被っていたのですね。
つぎは、Bの番です。もし、Aが赤い帽子を被っていたら、自分の帽子の色は白です。もし、赤ならCは自分の帽子が白だと分かったはず。だから、Aは白い帽子を被っていたんですね。
次は、Aの番です。ここがチョト難しそうだ。今までに分かったことまとめてみよう。
1.帽子の数は赤が2つと白が3つ。
2.Cからの情報→AかBのどちらか、または二人とも白帽子。
3.Bからの情報→Aは白帽子だ。
つまり、Bの情報からAは自分の帽子が白帽子と分かったはずだ。だから、Aが分からないと答えたのは嘘(うそ)ということでAは罰ゲームが待っているかな。さて、このゲーム前に座るのと後ろに座るのはどっちが得かな。

論理パズル

第2問-額のシール

額のシール

向かい合った3人、A、B、Cに赤と青のシール4枚ずつ計8枚が用意されています。目隠(めかくし)しされた3人の額(ひたい)にシールをそれぞれ2枚ずつ貼(は)り、余った2枚のシールは隠(かく)します。3人は自分以外の2人に貼られたシールを見ることはできます。審判となる人が、自分の額に貼られたシールの色を当てるようにA→B→C→A→B→Cのように順番に質問していきます。何故そう思うかをしっかり論理的に答えないとだめですよ。
まず、一周目。A、B、C三人とも「分かりません。」と答えました。もし、三人のうち二人が赤または青のどちらかのシールしか貼ってなければ、残りの一人はそれが見えるので、自分のシールはは青または赤と分かりますね。赤、青どちらのシールも4枚ずつしかないからね。つまり3人の内の2人が赤、青のシールを2枚ずつ貼っていることはあり得ません。続けて、Aに同じ質問をすると、Aは「分からない。」と答え、Bに質問したら「分かった。」と答えたそうです。Bは何故分かったのでしょうか。Bのシールの色は何色でしょうか。
では、次にAが赤2枚、Bが青2枚だと仮定して見よう。Cは間違いなく赤と青のシールだ。そうでなければAまたはBが4枚のシールを見つけ、自分の色は反対の青か赤かのシールが2枚と分かるはず。これははじめに否定したとおりだ。
でも、Cは「分からない。」と答えた。つまり、Aが赤2枚、Bが青2枚(またはその逆)という前提が間違っているわけだ。つまり、AかBの少なくとも一方は赤青のシールだ。両方とも赤青のこともある。
Cの答えを聞いてもAは「分からない。」と答えた。もし、Bが赤2枚(または青2枚)ならば、Aは赤青のシール。でもAが「分からない。」と答えたということはBの方が赤青のシールということだ。ということでBは、「私のシールは赤と青です。」と答えたのでしょう。

論理パズル

第3問-帽子の色2

3人の囚人

3人の死刑囚(しけいしゅう)A、B、Cの死刑執行の日、王様から次のような問題が出されました。「赤い帽子2個、白い帽子3個のうちどれかを3人にそれぞれ被(かぶ)せる。自分以外の帽子の色は見えるぞ。自分の帽子の色が白と思ったら逃げ出しても良いぞ。ただし、赤い帽子なのに逃げだしたら即座に打ち首だ。帽子の色に関係なく逃げないなら死刑は延期してやる。」
刑務所の看守(かんしゅ)は、3人に白い帽子を被せました。3人はお互いに他の2人の帽子の色を見ていましたが、しばらく考えた後、3人は同時に逃げ出しました。3人は、なぜ自分の帽子の色が白だと分かったのでしょうか。


3人の囚人

【解説】
死刑囚Aの立場に立ってみましょう。残りの2人の帽子は白ですね。Aは自分が赤い帽子だと仮定しましょう。するとBは当然考えるはずだ。もしB(自分)が赤い帽子なら、AとBが赤い帽子なので、Cは自分は白い帽子だ気がつき(だって赤い帽子は2つしかない)、Cはさっさと逃げ出すでしょう。そうでないとなるとBは自分の帽子が白だと気がつくわけです。そこでBは逃げ出す決意をするはずです。同じようにCも自分の帽子が白だと気がつき逃げ出すはずです。
でも、実際にはBもCもすぐには逃げ出さないのは、Aが赤い帽子たと仮定してことが間違いでAは白い帽子を被っていたということです。3人とも同じように考えれば同じように逃げ出すことが出来たわけです。けっこうややこしいでしょう。世の中そんなに頭のいい囚人ばかりでないからこううまくはいかないかもね。

論理パズル

第4問-虫食い算

虫食い算

虫食い算とはある意味で論理パズルだね。決まった計算方法がないくて、シャーロックホームズみたいに少しずつ手掛かりをつなぎ合わせて推論していかないといけない。
まずとりあえず、空白の□にA~Iまでの番号をつけよう。
1. まず、一番下のIはその上に8があるので8と分かる。I=8だ。
2. 6×Bが□8となるので、Bは3か8だろう。掛け算の6の段で1の位が8となるのは、6×3=18か6×8=48の二つしかない。
3. Bは3ではない。A6×Bは3桁なのにA6×4は2桁。Cが0でない限りこれはあり得ない。つまり、B=8だ。
4. 掛け算の結果の1段目は2段目の2倍だ(4と8だから)。すると、F=4は分かる。
5. 4行目は2桁。Aが2ならは26×4=104で3桁になってしまう。つまりA=1だ。
6. ようやく答えが出たね。A=1、B=8なので、掛け算は16×48となる。
7. 16×8=128, 16×4=64、つまりC=1、D=2、E=6、F=4となる。
8. 足し算の答えは、128+640=768、つまりG=7、H=6、I=8、これですべてだ。
9. 16×48=768がこの計算の結果です。ご苦労様でした。

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第5問-消えた1000円

消えた1000円

3人の客が一人1万円ずつ、計3万払ったのは事実。店長は5000円返します。レジ係はこの内3000円だけ客に帰し、2000円くすねました。1000円はどこにも消えてないですね。

客の立場から見ると、最初1000円ずつ払って1000円ずつの払い戻しがあったのだから、3人で(10000-1000)×3=27000払ったことになる。
店長の立場では、客から受け取った、30000円から5000円を返金したので、25000円客から受け取ったことになる。
客は27000円支払って、店長は25000円しか受け取っていないので、その差額2000円はレジ係がネコババしたということだ。
レジ係が正直に2000円を客に返せば、客が支払った額は27000-2000=25000円で、店長が受け取った額と全く同じだ。つまり、レジ係がくすねたお金は足し算ではなく、引き算しないといけなかった訳(わけ)です。

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